13

罪津:「おはよう。色々わかったよ。長くなるから昼休憩に話すわ。」



朝イチで、罪津が話し掛けてくれた。

でももう、ベギさんのカートリッジは...。



埋原:「ありがとう。でも、あれ、他の人に買われちゃった...

。」


罪津:「〆ノレ力リのやつ?」


埋原:「うん。そう。」


罪津:「他にもあるらしい。」


埋原:「え?」


罪津:「詳しくは昼に話すわ。」



罪津にそう言われて気になって、昼休憩までの授業は内容が全く頭に入らなかった。

元々ロクに入庫できない頭だけど...。


昼休憩に突入すると、すかさず罪津の所に行く。



埋原:「ねえ、教えて☆」


罪津:「カートリッジの話よね?」


埋原:「うん、そう。」


罪津:「〆ノレ力リのやつさあ、画像よく見た?」


埋原:「え?まあ、見たかな。」


罪津:「カートリッジの全方向撮影されてた?」


埋原:「全方向?1枚しか画像なかったよ。」


罪津:「その画像、数字とか色の入ったラインは見えた?」


埋原:「うーん、憶えてない。」



ハイパーフォンが手元にあれば、画像を見せられるんだけど、登校したら放課後までの間、学校の金庫にしまっておかなければならないという校則がある。



罪津:「まあ、1枚しかないんだったら、偽物か、アレの意味を全く知らない出品者かのどっちかだね。」


埋原:「そうなの?なんで?」


罪津:「これ重要だから、ちゃんと憶えてな。」


埋原:「うん。」


罪津:「デンガクのカートリッジには、必ず、データ番号と、内容表示がある。」


埋原:「データ番号と内容表示、ね。」


罪津:「現物1個持って来たよ。」


埋原:「え!?マジで?違法じゃないの?」


罪津:「持ってるだけならいいんだよ。使うのに制限があるだけなの。」


埋原:「ふーん。」


罪津:「で、まあ、見てよ。あ、でも、人目に付かない所に行こうか。」



人目に付かない所といえば、体育館裏がド定番だ。

男子と女子が2人っきりになり、こ、こ、告白したりなんだりとか...あと、喧嘩とか、色々と利用価値の高い場所だ。

私達も2人っきりでそこに移動したわけだ...。


そして罪津は、ポロッとブツを出して見せてきた。



罪津:「これは学校で使う、学習用のやつ。」


埋原:「こんなのなんだ...。」


罪津:「おまえ、1度も見た事無かった?」


埋原:「興味無かったし、ビリビリが嫌だったから。」


罪津:「されてる時は見たくもなかったわけね。」



馬鹿にされるかと思ったけれど、なんか納得してくれた。

罪津は今までとは何かちょっと違う。



罪津:「で、ここ見てよ。」



そう言った罪津の指は、‘Gー097’と書かれた部分に置かれていた。



埋原:「Gー097...。」


罪津:「これがデータ番号。」


埋原:「なるほど。」


罪津:「学習用は‘G’で始まる。個人用は‘K’。」


埋原:「うん。」


罪津:「数字は、ただの番号だね。多分、古いやつほど小さい。これはかなり古いやつ。」


埋原:「うん。」


罪津:「でな、ベギカートリッジは、‘K-192’なんだって。」


埋原:「え!?」



これは重要情報だ。

正確かどうかはわかんないけど。



罪津:「あと、内容表示な。こっちを見て。」


埋原:「うん。」


罪津:「白ラインがあって、左横にO21001、右横に7って表示されてるよね?」


埋原:「あるね。」


罪津:「この色は、白は中身が無いって意味。これ、中身消したやつなんだ。」


埋原:「そうなんだ。」


罪津:「青だと中身の量が少ない、黄色は多い、赤になるとめっちゃ多いって意味らしい。」


埋原:「それ、色で分ける意味あんの?」


罪津:「そこよ。それ重要なんよ。」



イイ質問をしたらしい。

今のあたし、冴えてるかも。



罪津:「黄色のやつをイれると、一発でトぶ可能性があるらしい。」


埋原:「えぇ!?」


罪津:「人によっては耐えられるとかで、ギリギリなんだって。」


埋原:「ヤバいじゃん。じゃあ、赤は?」


罪津:「まあ確実にトぶだろうね。赤いのは、イれるためじゃなくて、保管と解析が目的なんだって。」


埋原:「はあ。怖えーよ。」


罪津:「ベギのは赤。」


埋原:「えー!?」


罪津:「見付けても使えんよ。コレクションするだけにしとけよ。」



....そうか...。


でも、そうだとしても、あったら欲しい。

あたしの近くにベギさんが居てくれる、そんな気になれるから。



罪津:「で、その色の左が、データがカートリッジに入れられた時の年月日。」


埋原:「ふむ。」


罪津:「右が、イれるのに使われた回数。」


埋原:「ほー。」


罪津:「つまり...」


埋原:「つまり?」


罪津:「O90910よりも新しい数字のやつは、偽物。」


埋原:「ベギさんの命日だもんね。」


罪津:「そう。で、右の数字も、0以外は偽物。」


埋原:「なんで?」


罪津:「イれたらトぶからだよ。トんだ人が発見されたら、警察か救急車呼ばれるだろ?」


埋原:「そうね。」


罪津:「そしたら警察が持って行くでしょ。」


埋原:「なるほど。そうか。」



もしかしたら例外あるんじゃないかな?

でもまあ、大体そうだろうね。



罪津:「以上。わかった?」


埋原:「わかった。」


罪津:「俺、役に立った?」


埋原:「めっちゃ嬉しい。ありがとう。」


罪津:「じゃあさ、俺からウメに1つ、お願いしていい?」


埋原:「え?何?」



え...なんかHなこと?

それは...それはさすがに...。



罪津:「担任に没収されたスパークメモリ、取り返したい。」


埋原:「そんなん持って来て何をしようとしたのよ?」


罪津:「それは秘密...で、手伝ってもらいたい。」


埋原:「あ~、まあ、いいよ。」



罪津は、明日の運動会の予行演習で、全校生徒と教師が校庭に集まった隙に、職員室に忍び込んで、担任教師の机を開けて取り返すのだという。

あたしと罪津は、仮病を使って別々に予行演習を抜け出す。

職員室に教師が残っているなら、罪津がその教師を引き付けるから、その隙にあたしがやる...。



埋原:「なんだか泥棒みたいだね。」


罪津:「自分の物を取り返すだけだよ。」


埋原:「いいよ。やるよ。」


罪津:「お願いするわ。じゃあ、これ渡しとく。」



担任の机のものと思われる鍵と、スパークメモリだった。

そのスパークメモリを、本物と入れ替えるらしい。

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