10
罪津:「頭を切り開くとかそんなんじゃないと思うよ。」
どうしても気になったあたしは、学校に行ってすぐ罪津に話し掛けた。
埋原:「じゃあ、吸出し品ってどうやって作るの?」
罪津:「そこまでは知らんよ。」
埋原:「そんなんじゃないって言うから知ってるかと思った。」
罪津:「全く活動休止してない有名人のも出回ってるから。」
埋原:「本物の吸出し品を見た事がある?」
罪津:「無いよ。ってか、なんでそんなに気になるん?やめとけって。」
埋原:「あたしがバカだからよ。」
罪津:「おまえの事あんまり知らんけどさあ。勉強できなくても幸せになれるよ。そういう人いっぱいいるよ。」
埋原:「あたしにお父さんは居ない。」
罪津:「え?」
埋原:「母さんが、泣くの。『私は馬鹿だから、体を売るしかないんだ』、って。『夜遅くまで働かないといけないんだ』、って。」
罪津:「....。」
埋原:「『馬鹿だから、お父さんに捨てられた』、って。『私みたいにならないように、ちゃんと勉強して、良い学校行きなさい』、って。」
罪津:「わかった。わかったよ。」
埋原:「でも、あたしもバカなの!弟にもバカにされるの!」
罪津がわかったと言ってくれているのに、あたしは止まらなくなってしまった。
何かのスイッチが入り、感情が昂ったまま収まらない。
うわあああああああ!!
あああああああああ!!
あああああああああ!!
みっともなく、大声で泣いてしまった。
泣きながら、なんであたし、こんな所でこんなに泣いてんだろうって、頭の隅っこで冷静になってた。
罪津:「わかった、わかったから。俺が調べてやるよ。できる限り。それまでは何もすんなよ。な?」
あああああああああ!!
うわあああああああ!!
罪津にそう言われても、収まらなかった。
抹元:「ウメちゃん!?どうしたん!?」
マッツンが来てくれた。
抹元:「ザイッツ、ウメちゃんに何言ったん?」
罪津:「何も言ってねえよ。」
抹元:「じゃあなんでウメちゃん泣いとん?」
罪津:「家族の事思い出したみたいよ。」
抹元:「ああ、それか...。」
そんなやり取りが絶賛泣き喚き中のあたしの耳に入る。
ほんでもって教師がやって来て、2人に事情の聞き取りを始める。
教師:「いいよ。いいんだよ。保健室行こうか。」
普段と全然違う、イヤらしさ抜群の優しさアピールを含んだ声で、教師が私に話し掛ける。
埋原:「うぐっ!ぐっ!おか、あさんが、っ!おかあっ、さん、っ、とっ!ぐっ!」
自分でも何を言っているのか、何を言いたいのかわからない。
咽び泣いてしまい、まともに喋れない。
このままここで泣き喚くのも悲惨過ぎるよね、と、冷静部が言う。
あたしは素直に教師の言う通りに保健室に向かった。
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