七、若宮送り
気がついた。
さっきと違って、あたりは真昼の明るさで。
でも、息苦しいのはまったく変わってなくて。
「なぁ、こんなんでいいのかよ」
「いいんじゃねえの。虫でいいって、聞いたじゃん」
「でもさぁ、教えてくれたセンパイはカエルでやったらしいじゃん。
セキツイ動物つかった方がいいんじゃねえの」
ガキの声だ。
ガキの声なのに、すげぇでけぇ大声で、耳がつぶれそうになる。
……そこで気づいた。
耳がねえ。
耳がねえのに聞こえてる。
それどころか、目もなかった。
手もねえし、足もねえ。そんな体でギュウギュウに締めつけらてる。
「だからってミミズはねえだろ、ミミズは。こんなもん、ぜーったい役に立たねぇって」
「いいじゃんかよ。それよりスコップ忘れんなよ」
ミミズ。
ひょっとして、俺のことか。
なら、俺の体を締めつけてんのは。
この形、やっぱり手か。
俺、ガキの手に握られて。
「おい! 見ろよ! あれカエルだぜ!」
「マジかよ。おい捕まえろ! あれつかった方がぜったい面白れぇだろ!」
「おい何やってんだよ! そんなミミズもういいだろ!」
――― 離されるのか?
――― 助かるのか?
そう思ったとたん。
息苦しさが急に、
おれの、からだが、ぐしゃって、にぎりつぶされて。
また、めのまえが、まっくら、に
《完》
インシュウムラ 武江成緒 @kamorun2018
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