概要
赦しを得たい。それには大人も子供も、関係ないのだ。
舞台は2006年の千葉、市川。悠葵《はるき》は中学受験を控えた小学六年生の少年である。彼は両親に、先生に、同級生に対してずっと自分を偽って「よい子」を演じ、期待に答えてきた。そしてそんな生活に辟易としていた。
ある黄昏時。
大柏川の桜並木で、悠葵はひとりの男に出逢う。目の死んだような、ひょろりと猫背な枯れた男だ。何となくその男に興味を持つも、その日は名も交わさず別れるふたり。
翌日の下校時間。近所のある公園で、悠葵は絵を描く、あの男と再開する。彼は「マサ」さんというらしい。そのマサさんは矢張り昨日と同じ虚ろな目をして、少年に何の期待も落胆もしない。話を聞いているようで、聞いていない。そんなマサさんとの対話に悠葵は安らぎを覚えるようになり、その日から悠葵は足繁くマサさんへ逢いに行くよ