第7話 物件を探そう
(なんて拳だ。一体どれほどの
人間なら一撃必殺となる拳を、豪雨のように浴び続け、クマ怪人は思う。
(がむしゃらに殴り続けているように見えて、全打撃がガードの
薄れゆく意識の中、クマ怪人はブルーの打撃を分析した。
細かい点は違うが、空手にもボクシングに似た技がある。ジャブは
それらを無意識下で
(一年間、死に物狂いで修行してきたからこそ分かる。一年前では気づけなかった実力差が明確に)
痛感した
「だが! 魔王様のためにも! 負けるわけにはいかんのだ!」
しかし、彼は
クマ怪人の想いが乗った拳が、ブルーの顔面を
「一人の空手家として、
怒りを発散し
「なに、メガネを一つ壊されたところで、私には第二第三のメガネが
荷馬車の荷台に立つ仲間たちへ
「どうでしょうも何も、半殺しにしたのジブンやけどな」
と冷静に突っ込み、レッドとグリーンが、
「ぼ、僕はいいよ。いつでも倒せるし」
「右に同じ」
と同意を示し、ピンクは
「どーでもいい。てゆーかスーツ着て」
マニュキュアらしき物を爪に塗りながら答えた。
「というわけです。よかったですね」
足元のクマ怪人へ、ブルーは
「ふっ、スイーツのように甘くみられたものだ。覚えておくがいい」
「ええ。次に
一方的とは言え、生まれて初めて全力を出し切れた相手に、ブルーは今まで感じたことのない充足感を覚え、その場を後にした。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
「とんだ道草を食ってもうたな。日没前に、最寄りの村に着く時間ないんちゃう?」
荒野の地平線に触れようとしている日輪を見て、イエローが言った。
「ど、どうだろう」
荷馬車で手綱を握るレッドが
「待て、レッド! 森がある」
グリーンが右を指し示す。
そこには、距離感が狂うほど巨大な樹木が
「えっと……だから?」
グリーンの意図が分からず、レッドが反応に
「
「なんでや! 時間ないゆうたよな!」
グリーンの発言に、イエローが
「レッドよ。あの木を見て、どう思う?」
「聞けや!」
レッドの肩に腕を回し
「え? えっと……すごく……大きいです」
「そう! あれは五十メートル近く育つこともあるアオイ
イエローの叫びなど意に
「ほう、それはなんというか、すごくすごいですね」
ブルーが特に意味のない感想を述べるが、
「決めた。俺はあそこに住民票をうつす」
「うつすな」
グリーンは無視して会話を進め、イエローが簡潔に突っ込む。
「どの道、日もだいぶ傾いている。俺の物件探しも兼ねて、
「まー、一理あるんじゃない?」
一応筋は通るグリーンの言い分に、ピンクは同意を示す。
否定意見も出なかったため、一同は野営地を探すべく森へ向かうことにした。
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ファイブカラーズがバオバブの森へ入って行くと、民族衣装らしきものを身に
「おお! ひょっとして、あなた方は新たに召喚された勇者様でございますか! 我々の救難要請にこんなにも早く応じてくださるとは!」
(人おったんかい! あかん、グリーンの物件探しに来たとは口が
イエローが荷台の上で思考を巡らせていると、
「勘違いするな。物件を探しに来ただけだ」
向かいに座るグリーンが身も
「口裂いたろか! おい!」
イエローはグリーンの
しかし、老翁は気にせず会話を続ける。
「ははっ、聞き及んでおります。異世界ではつんでれ、と言う
「そ、そう言えば、勇者は何度か召喚されてたんですよね? どんな方だったんですか?」
レッドは浮かんだ疑問を口にした。
「あなた方とよく似たお
「ほう、私たちの先輩方が行ってたとは」
「博士、そんなこと言ってたっけー?」
老翁の答えにブルーが反応し、ピンクが口を開いた。
「あのハゲは隠しごとしかせえへんからな。ハゲは隠さんくせに」
イエローは
「そんなことはどうだっていい! それよりも大事なのは俺がここに住めるかだ!」
「それこそどうでもええわ」
グリーンの熱のこもった言葉に、イエローは冷たい言葉を浴びせた。
「勇者様の永住となると、国王陛下へお伺いしなければなりませんので、わたくしめからはなんとも。もちろんお泊まりになるのでしたら何泊でも。ただ」
「ただ?」
言葉を詰まらせる老翁を、グリーンが
「実は数ヶ月ほど前から魔族の襲撃を受けていまして」
「わかった。その魔族を始末すれば、ここに永住していいんだな?」
「なんもわかってへんやないか」
「た、退治はするんで、ご心配なく」
我が道をいくグリーンに、イエローが突っ込みを入れ、レッドがフォローを入れる。
「おお、ありがとうございます!」
レッドの言葉に老翁が
「ホー、このフクロウ怪人に森で勝てるとでも?」
ファイブカラーズの後方に、巨大なフクロウが姿を現したのは。
陰キャのレッド、インテリ風バカのブルー、人類滅亡を狙う自然愛護者グリーン、清楚系ビッチのピンク、それらにツッコミを入れる金髪関西人美女イエローの戦隊異世界旅 秋山紅葉 @AkiyamaKouyou
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