第8話
◇8◇
リスト化が終了した後は早かった。プログラマーは優秀だったようで、既にほとんどの開発を終えており、フクが作成した塗料のデータを載せるとすぐにシステムは動き出した。
システムは、現在フクの会社の職人たちが行っている作業工程をそのままシステム化したもので、職人たちも直ぐに使用に慣れた。
塗料を持ち出すときにシステムに入力、戻すときは重さを測り重量と共に入力する。使い終わった塗料の廃棄登録も、新しい塗料の登録も、これまで使ったことがなくリストにない塗料の新規登録も簡単にできる。
倉庫内の塗料の重量も図っているから、倉庫に入っている塗料の額が詳細にわかる。
優れたシステムであった。
職人にも事務員にも感謝を伝えられ、やはり社長ならできると思っていたんですよとか、私も時間があれば手伝おうと思っていたんですよ、などといわれ複雑な気分になるフクであった。
とにかく好評であった。
一か月ほどは。
一か月ほどで職人たちから不満が出た。
――社長、いちいち重さ測って入力するの面倒です。これ秤の画面をピッと読み込んだら入力終わりってなりませんかね?
――えーと、困ったぞ。できるんだろうか?そして、この開発にいくらかかかるんだろう?いきなり追加の開発を頼むのも怖いよなぁ。
かくしてフクは、まっちゃんのところに駆け込んだのであった。
さて駆け込まれたまっちゃんである。駆け込まれてもシステムのことはわからない。どうしよう、と悩んだけれども、わからないことはしょうがない、誰かに聞こう、とりあえず中小企業診断士に聞くか、ということで電話をすることとした。
「あ、先生、先生、私でございますよ、いつもお世話になっております。お時間ありますでしょうか?え、ない?あるでしょ、わかるんですよ、その口調の時はからかっているだけだって。もう慣れましたからね。え、いやそんな、舐めます、次回靴舐めますから…!それで本日お電話したのはですね…」と一通りの経緯を話す。話を聞くと中小企業診断士は言った。
「できるのは間違いないけどさ、知ってる?俺、システム系出身じゃないよ?いくらかかるかなんてわからないって」
「ですよねー」
「で、思いついたのはさ、県の工業技術センターみたいな財団がなかったっけ?工業技術センターじゃなくてさ、システム系の公益財団法人ところ。あれってまっちゃんの商工会の近くというか筑豊の飯塚市にあるでしょ。そこに聞くのはどうだろ?」
おお、そういえば!とまっちゃんも思い出す。県の公益財団法人にシステム系の支援をしているところがあった。所在地は、フクの会社の所在する鞍手町を含む筑豊地区の中核都市である飯塚市だ。
とりあえず、聞いてしまえばいい。ダメならダメで次の手を考えようと、話はまとまり、まっちゃんはそのままの勢いで公益財団法人に連絡をした。すると簡単にアポも取れ、後日フクはまっちゃんと共に公益財団法人に向かったのである。
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