ペンキ屋のおっさんのDX  ~ペンキ屋のおっさんが倉庫を綺麗にしたら時代の先端を走ってた話~

@akisame_suzumushi

第1話

◇1◇

 2017年のある日のことである。

 自分の会社の倉庫を見ながらフクは思い立った。


――よし、倉庫を綺麗にしよう。


 元々気にはなっていたのだ。ただ見て見ぬふりをしていただけなのだ。同業の仲間の倉庫もみんな汚いし。汚くても何とかなっていたし。たまに、いやしょっちゅう何をどこに置いたか分からなくなるけれど、それでもまぁそんな物だし。それに綺麗にすると言ったって何をどうすればいいか分からないし。何より面倒くさいし。


 それでも、その日、綺麗にしようと思い立ったのである。しかし、どうすれば良いかは分からない。どうすれば良いかは分からないが、こういうときにどうすれば良いかはわかる。

 地元の商工会に行って、「倉庫綺麗にしたいんだけど、どうすればいいの?」と聞けば良いのだ。

 フクは商工会の副会長なのだ。偉いのである。ちなみに年齢はそこそこいっている。ペンキ屋のおっさん、というよりは上かもしれない。ここではおっさんで通すけど。


 フクの会社はフクモト工業という、日本の端の方の県のそのまた片田舎、福岡県は鞍手町、にある塗装業者である。ペンキ屋といった方がイメージしやすいかもしれない。

 そして、ペンキ屋の倉庫は汚い。もの凄い量の一斗缶がただ雑然と置いてある。そこに綺麗に並べようという意思など感じることはできない。

 その中から、その日の現場に必要な塗料を探し出すだけでも時間がかかる。複数の現場を抱えている場合は、必要な塗料が別の現場で使われていることもある。でも、どこの現場から分からない。そういう場合は、誰かが発注する。そして塗料が余る。

とはいえ、別の現場で使われているから発注した、という場合はまだ良い。いつものことだし。あ、いや、やはりあんまり良くないかもしれない。塗料が余るし。

 しかし、よくよく考えてみれば、倉庫のどこかにあるけど探すのめんどくさいから発注した、というのは許せない。いや、そこまで強くは言わないけど。だって、フク自身もそうしたことあるし。だけど許してはいけないような気がする。そうして塗料が余るし。


 なにせ塗料にも消費期限がある。使い切れない物は捨てなければならない。どれだけ廃棄があるか分かるのは決算時期の棚卸作業で、これがだいたい200万円になる。毎年200万なのだ。しかも、産業廃棄物だから捨てるのにも多大な経費がかかる。

 だから、フクは思ったのだ。


――あれ?俺、毎年200万円捨ててるんじゃない?しかも、200万捨てるのに金使ってるんじゃない?


 そして、話は冒頭に戻るのである。

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