第5話
◇5◇
話を一通り聞いた中小企業診断士は、まず一言、
「面白いですね」と言った。そして、「でも開発費用は大丈夫ですか?」と続けた。
この日を迎えるまでに一週間ほどの時間があり、もちろんまっちゃんに最初に話すまでにも時間があったため、その辺りの話は進んでいる。
実施体制は、飲みながら盛り上がったペンキ屋3社、その一人が連れてきたシステム会社、そしてシステム会社が連れてきたフリーのプログラマー。費用はプログラマーの人件費分でこれはおそらく支払うことができる。
5Sで削減できたコストの3分の1は会社に残すことになっているので、それを充てればいい。他にも二人仲間がおり、費用の負担はできるはずだ。そして、完成したシステムはシステム会社が販売するということになっている。
「その販売の利益ってどうなってますか?社長の会社も儲かるんですよね?」
と、システム販売について中小企業診断士は質問した。
「その話は今のところ出てないな。おそらく、システム会社側でとるはずよ」
「確認してくださいね。せっかく作るならその後の販売による利益も見据えた方がいいです。この話が上手くいくとして、在庫共有する会社は増えないとメリットないですから、参加企業を増やすために販売する、すると社長も儲かる、という仕組みにするべきです。とりあえず確認するのはタダなんで言いましょう。それにですね、社長、システム販売で利益出ると、前回の経営革新だった雨の日の遺品整理とかするよりもいいと思いますよ」
「といいますと、どういうことでしょうか、先生」
これは、相槌役のまっちゃんである。
「このシステム入れると、在庫状況がわかってないといけないはずで、その為には綺麗な倉庫が必要です。以前お話ししたように、システムは5Sが整った現場に入ることによって、機能するんですから。
なので、将来的に社長の会社は塗装業向けに倉庫の5Sを教えるコンサル業を開始すればいいんですよ。システムの販売には、5Sコンサルがついてくるという仕組みでもいいかもしれませんね。
雨天時の収益としても遺品整理よりは見込めるはずですし、ある程度年齢のいった職人さんは、現場仕事も続けられないでしょうから、こちらの仕事に回ってもらうのもいいかと思います」
「ああ、そうかもね。倉庫で単管組むとかいつもやってたことやもんね。そういうのも考えた方がいいかもね」
とシステム完成後の未来が見えたフクである。
「で、どうでしょう、先生、これが経営革新として認めることができるとして、実際の計画の成功と言いますか、そちらの方は見えますでしょうか」
「システムが完成するとして、それが社長の会社にメリットをもたらすのは間違いないよ。何せ、システムに現場を合わせるんじゃなくて、現場にシステムを合わせることができるから。でもね、社長、これは先ほどの費用の話に戻るんですが」と中小企業診断士はフクの方を向いて話し出す。
「システム作成の経費は、3社で分担という話でしたが、おそらく他の2社は途中で抜けると思いますよ。その時、社長の会社で残額全て負担できますか?成功の前段階として、その費用負担と後は社長のやる気の問題になるでしょうね。社長がやる作業が細々とたくさん出てくるはずで、それに社長が耐えれるかの2つが成功の鍵だと思います」
――え?何言ってんのこいつ、俺一人になるの?
と思ったフクであった。
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