散華散華
すらかき飄乎
散華散華
疊を踏んでこれはと思つた。
思はず
一足
靴足袋がどうも氣持ち惡くつて
何だか
「
背中を目で
又、
棚田も、杜も、池も、元はと云へば
康三さんは僕や妻の顏を一度も見ぬ
「おい、どういふことだい。一人で先に行くなんて……」
「あら、魚がゐるわねえ。鯉だわね」
何かゞ
魚にも、何とはなしの汚らしさといふべきか、見てゐて何やら
「…………」
「む? 何だね?」
「オクレヨ、オクレヨ……」
「何なのだい? 僕には判らない」
「だから、食べる物が欲しいのですよ、魚は」
「あゝ、
「あら、よくつてよ、知らないわ…… ――オクレヨ、オクレヨ……
見る〳〵
「オクレヨ、オクレヨ……」
帽を脫いで、さつと振つてみた。一面、びち〴〵と
興を覺えて、騷ぎが幾らか
「オクレヨ、オクレヨ……」
畜生の哀しさか、何度遣つても同じ事で、
「貴方は殘酷な人ね」
「何、面白くてね。無論、魚には氣の毒な事だが……」
「
「まあ、氣の毒な事ではあるがね…… 畜生の
「ずいぶん莫迦にして入らつしやるのね。可哀さうに」
僕は
「莫迦にされ
僕は
「オクレヨ、オクレヨ……」
考へてみれば、生きて行くといふ事は
「オクレヨ、オクレヨ……」
ふと
何やら、誰だかの
もう一度小石を撒いた。
途端に全ての鯉が、蜘蛛の子を散らすやうにさつと離れて行く。さうして二度と戾つては來ない。
僕はぽつねんと殘されて
何時の
厭に黃色い
三時
氣が附けば、
片附かない
何だか判らぬ乍らも、大方が諒解される氣がした。
<了>
散華散華 すらかき飄乎 @Surakaki_Hyoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます