第10話 破滅の魔法
「魔法だと? あの芋虫が? そいつはちょっと訳がわからんぞ? あの姿で——」
「形に囚われるナ。第一魔物でも生き物とは思えん造形してる奴いるシ。お前のとこの奴にも下半身がキャンバスになっているやつがいるだろウ?」
ダイコクはミステリカの話からゲマリアを連想した。ミステリカは話を続ける。
「あいつはいわばシズルの釘のようなものサ。あれは突き刺すことで魔法を発動するがこいつはあの声がトリガーとなっていル。だからアレに知性は無いし、意思も無イ」
「……へぇ。じゃあ——」
がくん、とまた足が動かなくなる。しかし、ダイコクはそれに抗い、ミステリカの精神体を守るように立ち塞がり芋虫の攻撃を完全に受け止め、破壊する。
「よし——」
しかし、
「ギャ!」
「ん!?」
受け止めた際に飛び散った芋虫の足の破片が、背後にいたミステリカにまで届き頬に傷をつけた。
「おのレ……! でかい図体の割には動きを止めるとかみみっちい効果しやがっテ! 何気にまた肉体の方も刺されてるシ!」
「いや……これはそれだけじゃないぜ」
「ほ? 『敵を静止状態に変える』とかでなく?」
「ああ、っと次が来るな」
芋虫の次の挙動を警戒しながら、ミステリカの肩を掴んだ。
「おおゥ、セクハラ」
「黙ってろ。いいか。次は壁で防げ。お前そういう
「ヘ? まぁやるガ」
頭に?マークを浮かべるミステリカを芋虫は待たずに足を突き刺す勢いで伸ばした。
「“形をなセ! 大気の鱗!”」
ミステリカは懐から空色の魔法薬を取り出し魔法を唱える。すると芋虫とミステリカ達の間に遮るように空気の壁が形成された。
芋虫の足はそのままミステリカ達に進んでいく。そして、あろうことか芋虫の足は空気の壁を掻き分け、こじ開けた。
「ファ!?」
芋虫の攻撃がミステリカ達に到達する。
しかし今度は刺さることはなく、むしろ芋虫の足の方が砕け散っていた。
「これは……ダイコク、お前か!」
「ああ、さっき肩を掴んだ際にちょっとな。……これではっきりしたぜ」
ダイコクはミステリカの肩に触れた際に“存在強度を変える魔法”でミステリカを強化していたのだ。この攻撃でダイコクは引きちぎった芋虫の一部を握りつぶしながら、芋虫の魔法の効果に確信を得た。
「アレの攻撃は必中だ。どんな攻撃も必ず当る」
「……なんト?」
「どのような形であれ、アイツの攻撃は最終的に必ず目標にまで届くんだよ。だから多分回避は無駄だ」
「なんだそれは、因果が収束してるとでもいうのカ?? ずるくネ?」
抗議の声を上げるミステリカなんか知ったことではないと、芋虫が攻撃を仕掛けようとする。
しかしダイコクはミステリカによって固められていた空気の壁を思い切り叩き、芋虫にむけて吹っ飛ばした。
芋虫に固まった空気が深々と突き刺さり、芋虫は攻撃を中断せざるを得なくなった。
「だが、それまでだ。当たってしまえばそれは普通の攻撃だ。だから防ぐことは可能だし、それに攻撃となる前に潰せば効果は発揮されねぇ」
「はーなるほド。じゃあ、もうなんの心配もないではないナ! さすがダイ——」
コクまでいいきらないうちにミステリカ達に影がかかる。
見上げると、いつの間にか芋虫が背後にいて、巨大な顎でミステリカ達を噛み砕こうとしていたのだ。
「脳が混乱するなこれ! ぬゥリャァア!!」
バキンっ
「—————!!?」
「これで攻撃は当たったことになるかぁ!? 逆にぶっ潰してやったがなぁ!!」
ダイコクは飛び上がり、白い縄を巻いた腕で上顎を破壊した。
「魔法はすごいがこいつ自体は大したことはないな。このまま叩かせてもらうぜ!」
そのまま攻めようとしたダイコクだったが芋虫がまた、その姿を消す。しかし先ほどとは違い消えてないものがあった。
「あ……? なっ!?」
白い縄だけが残り、そのままミステリカ達に向かって自然落下してきたのだ。
(まずい、タイミングが……! 避けられねぇ!!)
ダイコクは白い縄に纏わりつかれ、ゴリゴリと体にヒビが入っていく。
「ぐあッ!!」
「つかメ! 我が肉体!」
ミステリカはダイコクに絡まっている白い縄を肉体に掴ませた。たとえ精神体と肉体に分離していても、元は一つである為、白い縄はミステリカの魔法の対象となる。
「“解けロ”!」
ミステリカがそう唱えると、白い縄はどろりと薬となり解けていく。そして、白い縄だった薬品はそのままミステリカの精神体の周りを漂う。
「やれやれ、俺がひび割れるとは。ミステリカ、お前相変わらずやばいもん作ってんな」
「まず助けたことに感謝したまえヨ。この劇薬は後で大切に入れておくとして、芋虫はどこに行ったのか……」
ミステリカはキョロキョロと辺りを見渡す。今まで戦っていた筈の芋虫は何処かに消えていた。
「ハァ、あいつどこに行ったんだ? 時空間移動できるやつはこれだから……」
「時空間移動……ダイコク、やはりこれハ……」
ミステリカはダイコクと目を合わせる。
「まぁ、あいつも動いてるからな……あの時みたいに最悪って感じはしないが、」
ダイコクは腕を組み、眉をひそめた。
「魔王の再来ってことにもなりえるかもしれん」
ハァ、とため息を吐きながらもすぐにダイコクはニカっと笑う。
「まぁ、なんとかしようぜ? 俺たちなら出来るさ」
「えー……出来ればお前らだけでどうにかしてくれないカ? 私とは関係のないところデ」
「楽しようとすんな。お前も戦え。てか新しいのには興味持つタイプだろうが」
「あまり手札を潰されたくもないのだヨ。弱ったとこで漁夫の利を得に行くかラ」
「ふざけんな。駄目の極みだろがソレ——」
ボッ
「ん?」
「ホ? アレは釘カ?」
音がする方を見ると地上から、巨大な釘が飛び出していた。よくよく見てみると辺りは炎上しているように見える。
「……あの芋虫どこ行ったのかと思ったら……」
ダイコクは呆れたような顔をする。
「フゥム。私達の後に
(トモ……?)
ダイコクはミステリカの発言に気になるところがあったが、まぁミステリカだしなんかやったんだろうな、と思い無視することにした。
「……なんにせよ行ってみよう。無関係じゃなさそうだしな?」
ミステリカとダイコクは釘がある方へと向かっていった。
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