真夏なのにそこはかとなく不気味な話
- ★★★ Excellent!!!
「シンデレラのようにハッピーな話でも、人魚姫のような悲劇でもない」と冒頭で語られているが、なんともつかみどころがなく薄気味の悪い展開だ。
主人公のアイデンティティを揺さぶってくる謎のメールが怖い。
鏡に映った自分に向かって「お前は誰だ」と言い続けると精神に変調をきたすという。人間の自己の認識って結構あやふやなものなので、そこをぐらつかせるような言葉には本能的に恐怖を抱くのだ。
確かに夏の暑さには頭がもうろうとして自分が何をしているのかわからなくなることがあるし、同じような日々の繰り返しは時間の感覚を忘れさせる。
このホラーじみた話の舞台には夏がふさわしいのかも。
ところで、主人公は学校で過ごす時間のことを三万六千秒と記述しているが、これをそのまま時間に直せば10時間だ。午前八時に始業だとしても帰るのは午後六時になる。進学校だとこの位長い授業時間のところもあるのか……。