魔法が実在し、研究の対象になっている現代日本が舞台。
魔導師養成学校を優秀な成績で卒業した伊藤天音は、国立第5魔導研究所に配属される。
だが、その実態は彼女の思っていたのとは違っていた。
第五は研究員が変人揃いの上規模も10人程度と、あまりにも弱小でキャリア形成にもつながらず、出世を望む天音にとって全くメリットのない勤め先で、彼女は転属を望むようになる。
夢と現実のギャップというのがこの物語の大きなテーマだ。
主人公の天音のモットーは、『憧れは、憧れのままにすべき』であり、夢を追うことで傷付いたり幻滅することを過剰なまでに恐れている。
そのギャップというのはおとぎ話のような「魔法」と、実在して国の管理によって管理される「魔導」という技術の間にも存在する。お役所仕事の規制でがんじがらめの魔導は、かつて魔法使いにあこがれた天音にとって、本音では受け入れがたいものなのだ。
頭のいい彼女は、その不満を心の隅に押し込め、魔導は自分の出世の道具として利用できるものと割り切ったつもりでいるが、先輩たちからその内面は見透かされている。
現実は望むようにならないし、夢を追うことで傷付くこともある。だが、だからといって最初から夢を諦め、醒めたふりして生きて本当に満足なのか、とこの物語は問いかけてくる。
主人公の心の変化を通じて、理想を持ち続けること、現実に抗うことの大切さを描いた一作だ。
“魔法が存在すると証明された世界。”
私はあらすじ冒頭で心を掴まれた…
そして気が付けば最新話を読んでいた。
時間を忘れるほど、本当に面白かった。
現代、近年魔法が発見され研究されている世界。
“魔導適正”が認められ、魔導師養成学校で優秀な成績を収め卒業した“天音”は、国立魔導研究所に配属されることとなった。
が、彼女は合理的な技術である“魔導”を嫌っている。
物語上の“魔法”に憧れていたが、現代の魔導はその憧れをことごとく否定したのだ。
それでも“魔導適正”という避けられない運命を受け入れた…つもりだった。
苦い努力の末に待ち受けていたのは、“弱小”と名高い第5研究所への配属。
そして絶望的に思われたその配属が、内面的な弱さを抱えていた彼女を大きく変える。
現実に立ち向かい前進していく姿は、眩しく元気をもらえた。
そんな天音を導く第5研究所メンバーが私は皆大好きだ。
彼らはそれぞれ、過酷な過去や不遇な立場に合っていた者ばかりだ。
その為第5研究所に来てからはお互い支えあい、尊重しあっているのだろう。
アットホームで温もりあふれる空間は、読んでいて本当に癒される。
また第5研究所が“弱小”でも成り立つにはそれなりの理由がある…。
研究は妨害されてばかり、人権も法律も魔導が絡むとおざなりだが、魔法が証明されてからまだ12年、激動の時代ということの証左だろう。
シリアスな場面も多いが、彼らの日常会話は完全にコントだ。(笑)
愛情や恋といったテーマも程よく織り込まれていて、ニヤケどころが多い。
顔のゆがみが収まらなくなっても良い時に読むことをお勧めする。
嬉しいことに、完結した本作の100年後の世界の新作が投稿された!
本作と合わせて読んでいきたい。