婚約者セリスに、婚約破棄を迫られる王太子オレア。なんか彼女は真実の愛とやらを見つけたらしい。
ため息をつきながらその要求を受け入れようとした刹那、王太子オレアの脳裏に転生前の記憶がよみがえる。彼は前世でも女運が悪く、散々辛酸を舐めさせられる人生を送った挙句に事故死していたのだ。
まず第一話で語られる前世の内容だけで心が痛い。
なんて女たちだ……。
裏切ったのはそっちなのに、まるで自分が被害者だと言わんばかりのその態度は何だ?
この手の輩は、ただ発情しただけのことを真実の愛などと呼び、錦の御旗として掲げれば何でも許されると思ってるのだ。
その根底にあるのは単なる生殖本能であり、理性ある話し合いなどを通用しない。どれだけ、お前らのやってることは信義に反することだと言っても聞く耳を持たないのだ。
こいつらに分からせるには暴力……暴力しかない! というわけで暴君になることにしたのが、本作の主人公オレアである。
基本的には温厚な人間なんだが、そのせいであまりにも周囲から舐められすぎた。
王太子という立場にある人間の面子を潰した奴には、相応の報いがあってしかるべきと、記憶を取り戻した彼はやっと毅然とした態度を取れたのだ。
その後に始まる世直しは、他者に対する敬意をなおざりにして生きていく人間の方が得をする世の中を正し、自分のような思いをする者をなくしたいという思いで実行される。
個人的には、こういう奴らの思考は生まれつきで、教育とかで強制するのはかなり難しいとは思うが、そういうのはいけないよねと、世間の人間の大半が思うようになるように倫理観がアップデートされる、
あるいはそういう事をした人間が酷い末路をたどったと語り草になれば、同じ辛さを味わう人間は減らせるかも知れない。
そのためには暴君と呼ばれることも厭わない。
そんな覚悟を決めた男の生きざまが、ここにはある。