第10話 精一杯の強がり

 あまりにも完結に説明された友人の死の理由に、呆然としてしまうが身構えていた俺の体から自然と力が抜けた。ずっとわからずにもやもやしていたことがやっとわかって、よかった。

 よくないのは、もうこいつは死んじゃってるってことなんだけど。



「…これからどうすんの?」



不毛な質問をしたと言った後で後悔した。



「どうするも何も、待ってるの成仏だけじゃね?」


「まあそうだよなぁ」


「でももしお前が幽霊カメラマン続けるなら、成仏は先延ばしかなぁ~」


「は?」



驚く俺に驚くこいつ。訳が分からず首を傾げていると、「ぷっ」と笑いだした。



「だってお前が幽霊カメラマンやってれば幽霊が見えて、こうやって会話も出来るわけでしょ?」


「まあ」


「俺の後悔はお前のことを祝えなかったこと。だから来月の誕生日祝って、そんで二人で記念写真撮って、んで満足したら成仏するわ」


「帰るわみたいなノリで成仏を語るな」


「ごめんごめん」



成仏しないってことはやっぱり出来ないらしい。幽霊はこの世に残してきた後悔ややり残したことを成し遂げたら成仏してしまうものなのかもしれない。


つっら。


さっきみたいに心を読まれないように笑顔を取り繕って、ニヤリと口角を上げてみせる。



「旅行代は誰が払うんだよ」


「そこは俺死んじゃったから」


「から?」


「自費でお願いします」


「サプライズとは」


「それな。でも回ろうと思ってチェックした場所には案内できるからさ」



行こうよ~と駄々をこねるのを無視することも出来ず、渋々頷く。一緒に旅行したらこいつの後悔がなくなる。それでそのまま旅行が終わったら成仏されちゃうの、本当は嫌なんだけどな。流石に言えないわ、幽霊にそんな酷なこと。



「観光雑誌読むのが趣味なのがここでやっと生きたな」



百日紅を見上げ、精一杯の強がりを言って見せる。今こいつの顔を見たら、確実に泣く俺。



「ねー確かに笑」



他愛ない話を間に挟みながら、旅行の計画について聞かされるのであった。

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[全10話で完結]幽霊カメラマン 青時雨 @greentea1

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