第9話 サプライズ

 しだれ柳の並木道、時々百日紅も植わっているけど、な道を進んで行く。紙みたいな質感の百日紅の花が散って、それが俺の頭にだけくっついて気づいたあいつが逐一取ってくれる。

 一通りここへ来るまでの話をすると、「そっか~」の一言で簡単に済まされてなんかムカついた。「そっか~」な情報量じゃないんだよ俺の体験したこの数日間の出来事は。小説に出来るレベルだよこの情報量。



「死んだ理由、家族から聞かなかったんだ?」


「お前から聞くことに意味があるからな」


「なるほど。本当は言いたくなかったんだけど、友達が幽霊見える体質になってまで合いに来てくれたんなら話すしかないね」



仕方ない感凄いな。本当に話したくない時の反応だ。



「で、何で死んだわけ?」


「完結に言うと事故、だね。不注意的な?」


「交通事故?」


「そうそう」


「不注意で死んだことを咎められたくなくて言いたくなかったのか?」


「…そ」



間があった。嘘だな。



「そう。で、本当は?」


「お前来月誕生日じゃん?」


「うん」


「休み取っといてって言ってたじゃん?」


「うん」


「実はこっそり旅行計画してて、サプライズしようとしてたんだよ。けど新幹線のチケット買いに行く途中で事故に遭っちゃって」


「…うん」



俺の誕生日のサプライズをしようとしてなければこいつは死ななかった…?



「言いたくなかったのはさ、お前が「俺の誕生日のサプライズをしようとしてなければこいつは死ななかった…?」って後悔するかなーと思って」


「怖いなお前、エスパー?」


「え何が?」


「俺今お前の言ったことと全く同じこと考えてたわ」



あいつは「でしょ、そうだよねぇ」と苦笑わらった。幽霊然としている、というと変かもしれないけど、死んでるっていう事実があるせいかこれまでの幽霊よりも幽霊なんだなって感じが凄い。隣を歩くこいつは何も変わらないように見えて、確実に死んでしまっていることが、幽霊であるという事実をリアルに俺に理解させた。

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