認定されなければいいだけの話。一瞬でもそう思った人は危険です

高齢社会となった現代日本において、認知症や高齢ドライバーによる事故が絶えません。また、頭の固い年配者に悩まされる人々が少なくない傾向にあります。

本作の舞台は、そうした今の現状と類似した20XX年。党の賛成多数で採決した老害対策法が、即日で施行されます。担当窓口に通報された六十五歳以上の高齢者が、国民投票によって生死を委ねられる法律です。

投票の結果、老害の認定が過半数を超えれば即銃殺刑。執行の瞬間は非公開ではなく、リアルタイムで中継されるのでした。

実際の日本で起こりうるはずのない世界と思っていても、生々しさに恐怖を覚えずにはいられません。重厚感のある人間の描かれ方は、映画を見ているかのようです。

本来、老害の意味は「組織が老いることによって生じた害」であり、老齢が原因の弊害ではありません。若者が年配者のせいで冷遇されるのなら、柔軟さで乗り切ればいいのでしょうが、本作の若者らの選ぶ未来とは果たして。

敬うべきもの、守るべきものについて熟考させられる作品です。

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