第7話 風呂場でねぎらうお姉さん
なにを慌ててるの? 後から入るって言ったでしょ。
一緒に入るなんて聞いてない? へへーん、言ってないもーん。
別に気にしないでいいから。昔は一緒に入ってたじゃーん。
子どもの頃の話だろって?
今も昔も、そんなに変わらないってー。
じゃあ、背中を流してあげるね。向こうを向いてー。
スポンジでシュッシュッと。
(体をこする音)
おお、たくましいね。男の子だぁ。
もうちょっと、強くこすってもいいかな? よしよし。
ビビらないビビらない。昔とどう違うか、確かめさせて。
はい腕をぴーんと伸ばして。いちいちビクつかないっ。くすぐったりなんかしないよ。大丈夫だから。
腕も足も、引き締まってきたね。
昔は私が守っていたのに、今はすっかり頼りっきりだぁ。
背丈も追い抜いちゃって。大きくなったねえ。
よし、じゃあ頭を洗うよ。目をつぶっていてね。
(頭をシャンプーで洗う音)
ホントは美容室だと、寝かせて洗うところだろうけど、座ったままでガマンしてー。
かゆいところはない? そう。大丈夫ね。
人にクシュクシュってされるの、気持ちいい? そう、よかったー。
(シャワーの音)
じゃあ、流すからね。熱くない? よしよし。隅々までザバーっと。
はい。終わったよ。
そしたらね。私も洗ってもらおうかな?
なによ。昔はこうやって洗いっこしたじゃん。
ふふふー。部屋は片付けられても、心の整理はできまいー。
(
じゃーん。バスタオルの中は、ビキニでした。
驚いた? 肩紐のないタイプだから、てっきり裸だと思っていたでしょー。
これバンドゥっていって、ヒモがないビキニなの。すっごい際どいでしょ。
胸が大きいから、入るかわかんなかったけど、ちょうどよかった。
じゃあ、お願いできる?
なんでビキニを外すのかって? 外さないと、背中を洗えないじゃん。
気にしなくていいから、ほら。
胸は隠したよ。はいはい、観念しなさい。
あー、そこそこ。気持ちいいよ。
昔からキミって、アンマとか上手だったよね。洗うのと背中のツボを押すのを、同時にこなすなんてさ。
それにしても、すごいよね。お風呂全体も、ちゃんと洗ってくれたんだ。床とか赤く汚れていたのに、どうしたんだろう?
ベランダに放置してた、高水圧のクリーナーを使ったの? 使い方がわかんなくて、放置していたんだよね、あれ。ちゃんと使えたんだ。すごいなあ。やっぱり、キミが来てくれて正解だったよ。
あれって、フリマアプリでまっさきに売ろうとしたんだけど、キミが止めたんだっけ。
家にあったのと同タイプだったから、自分だけでも使えた? 車を洗うのに、おじさんが利用してる? そうなんだ。
よかったぁ。危うく売るところだったよ。
ほんとにキミがいてくれて……あ、電話だ。
もしもし?
え!? 今から!?
ごめん、人が来る!
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