第3話 機能的なお姉さん

 ただいまー。

 うわっ。あれだけあった洗濯物の山がっ! 全部吊るされてっ!

 すごいねぇ。

 下着類は隠してくれてるし。

 えらいねえ。


 それになにやら、カレーの香りが。すんすん。


 ああ。ねー。やっぱり献立が思いつかないときは、カレーだよねえ。

 それはそうと、キミさ、エプロン姿がよく似合うよ。うん。エプロンと一体化しているみたい。


 ありがとう。お部屋を片付けてくれる上に、ゴハンまで作ってくれるなんて。 

 すぐ着替えるから待ってて。

 

 よし。じゃあ、いただきまーす。

 

 おほほほー。おいひい。幸せになる味だぁ……。

 具材がゴロゴロのカレーってのも、なんだか泣けてきちゃうくらいうれしい。

 お店のカレーだって味はおいしいけど、この満腹感や満足感は独特のものがあるよねえ。

 

 こういうカレーって、なかなか食べられないんだよ。自分で作らないとーって思うだけど、カレー一つ作る時間の余裕もなくて。

 なんかこう、やり込んじゃうっていうの? 一晩じゅう、煮込んじゃうんだよ。でね、作っているうち別のものが食べたくなって、カップ麺とか食べちゃうの。意味なくね?


 あのさ、食べ終わったら、台所に立ってみるよ。すぐ食べちゃうね。


 ああ。ごちそうさま。おいしかったぁ。お鍋の中身、全部食べちゃった。


 それでは、私の寸法を測ってくださーい。

 そうそうそう。これでね、キッチンの機能をアップさせるの。私の背丈でも、調理道具を取りやすいように。

 うんうん。この台は、いい感じだね。雑貨売り場で買ってみたんだけどさ。

 これでさぁ、私一人でもお料理できるだろうと、思うんだけど? 


 うーん。やらない人は、やらないかもって? 

 だよねえ。そうだよね。わかってた。お料理って習慣にならないと、なかなか作らないよね。


 ごめんね、手間を取らせちゃって。

 でもさ、私だって、キミになにかしてあげたいんだよね。せっかく来てもらっているんだから。

 お菓子くらいは、一人で作れたらなって。


 ん!? 

「一緒に作りたい」って?


 ホントに? 

 じゃあじゃあ、今度の日曜日は一緒にお菓子をつくろう。買い出しも手伝って。

 うわーい。お外でデートだねぇ。


 ってぇ! うわあわわああわ、危ない危ない!


(台から落ちて、依子よりこが、鍋を散らかす音)


 いたたぁ。ごめんねぇ。下敷きにしちゃったね。


(依子の頭に、雪平鍋がコンと当たる)


 あいてっ。


 うわああ。お鍋も散乱してるよ。せっかく掃除してくれたのに。


 お? 私の胸に、キミの顔が。

 ちょっと幸せそうな顔をしてるじゃん。


 よし。しばらく、このままでいてあげよう。ごほうび。

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