第2話 ゲーマーお姉さん

(シャワーの音の後、蛇口をひねる音)

 

 

 ふっはー。お風呂上がったよー。

 うわ、あっという間に片付いてる。なんということでしょう? 雑然としていた押し入れが、めちゃ機能的に。しかも、ジャンル別に分けてくれてるじゃん。

 文房具とか書類も入っていたのに、ちゃんと整理してて。

 ラベルまで貼って、どこになにがあるかも把握できるようになってるよー。


 ありがとおおおっ。こんなふうに片付ければいいんだね?

 スペースがないって思っていたのに。


 ん? ゴミ屋敷じゃないだけマシって?

 たしかにね。部屋は散らかすけど、ゴミ出しはきっちり守ってるから。


 上級汚部屋の住人になってくると、飲みかけのペットボトルが散乱していたり、ナン年前に開けたかわからないお弁当やお菓子があちこちにあったりするんだけど。


 私はその点、大丈夫! ヘマはしないのです。


 お洋服とかは、散らばってるけど。



 ああ、あの山が着替えなんだね。集めておいてくれたんだ。ありがと。

 明日、お洗濯をお願いしようかな。

 下着は何枚か、あげるから。おい目をそらすなっ。

 

 ヨシ! じゃあがんばったごほうびに、ゲームしよう。

 はい。アイス。

 棒アイスじゃゲームできないだろって? そんなこともあろうかと、片手でもできるゲームがあるから。

 仕事はいいのかって? 大丈夫。キミが来る前に、ちゃんと終わらせたよ。今端末を立ち上げるから、待ってて。


(端末と繋げたテレビで、ゲームを選ぶ音) 

 

 五目並べがいいかな。こういうパーティゲーなら、片手でもできるじゃん。


 よし、セット。

 

 え、なんか秒で負けたんだけど!? 何が起きた!?

 ダメムリ! 勝てない! 

 あー。やっぱり頭も整理されているんだねぇ。戦略で負けてたよ。


 よし、エアホッケーにしよう。


 よっ。ほっ。はっ。


 おお、いい感じに勝負になってんじゃん。


 はい、勝ちー。やったー。なんとか五目並べのリベンジ達成できたよー。

 でもキミ、強いねー。若いから、反射神経がいいのかな?

 ん、なに? ほっぺにアイスついてる?

 

……!?


 キミさあ、たまに大胆な行動を取るよねえ。急に顔を近づけてきて、拭き取るなんて。

 ほら、負けちゃったじゃん。さては作戦だな? やるねえ。


 はふう。ゲームしたい欲求が開放されたよー。付き合ってくれてありがとー。

 まだまだいっぱいゲームあるから、時間があるときに一緒に遊ぼう。キミが好きそうなゲームもたくさんあるよー。

 田舎にいた頃みたいに、いっぱい遊ぼうね。


 じゃあ、寝ようか。

 お布団でいい? ベッドもあるよ。ああ、実家でもそうだから、お布団のほうが寝やすいんだね。わかった。


 ところでさ……。



依子よりこのここ、空いてますよ。



 ほらほらポンポン。ほらほらポンポン。 




 おいちょっと無視しないで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る