第9話 最終回 さよなら? お姉さん

 今までありがとう。

 ここまでお部屋がキレイになったのも、キミのおかげだよ。

 自分では、棚なんてどうしようもなかった。

 忙しくて、全部押し込んで。

 キミに全部、押し付けちゃってたよね。

 ごめん。

 

 やだあ、どうしよう!?


 ダメダメダメ! 泣いちゃダメ! 明るくお見送りしないと行けないのに!

 私はお姉さんなんだから! しっかりしなきゃ。

 ホントに、ダメ……。


 ごめんね。混乱させちゃって。


 そんな。一緒に暮らせて、楽しかった。

 これからだと思っていたのに、お別れだなんて。


 ありがとう。こんなポンコツに付き合ってくれて。

 ホント私、ダメダメだあ。うわわああん。


 ふう、落ち着いた……。

 じゃあ、今まで本当にありがと。

 就職先でも、元気でね。

 辛くなったらさ、いつでも遊びに来ていいから。

 約束! 絶対! ね!  

 ねっ!





(ヒールを鳴らす音。あなたの目の前でストップ)


 え、キミが、新人の?


 そう。

 コホン。

 私が、この部署の主任です。

 あなたの教育係として、配属されました。

 今日から私が、あなたの直接の上司になります。


 気軽に、「依子よりこ」と呼んでください。

 

 ただし、家とは違ってビシビシ鍛えますので、そのへんは覚悟しておいてくださいね。




 

(缶ビールを開けて、飲む音) 


 はあ~っ。

 

 お仕事お疲れ様ぁ。

 

 まさかキミが、後輩ちゃんの代わりに就職してくるなんてねえ。

 

 中途採用でハンパだろうけどさ、感謝してる。会社としても、私としても。

 できる後輩ちゃんだったから、どうにかして優秀な人材をって思っていたんだけどさ。

 さっすが課長。見る目あるわー。


 どうだった、新人研修は? 大変だったよねえ。

 

 すごかったでしょ。私のネコカブり。

 ひっどいもんよ。

 私も毎日、課長の監視をかいくぐるのに必死で。


 その反動が、このザマってわけ。


(そばにあった下着を持ち上げて、落とす音)


 ね? 部屋がまた散らかっちゃったの。ホント私って、要領悪いんだよ。


 やっぱり私、君が側にいないとダメみたい。


 だから大家さんに頼んで、キミと一緒に暮らす契約しちゃった。

キミのお母さんの了解も、得てるよ。

 すっごい喜んでたぁ。

 

 これからもさ、片付けよろしくね。


 もちろんさ、片付け以外のことも……。


 ちょっとソコ、目をそらさないっ!


(おしまい)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バリキャリの皮を被った子供部屋お姉さんのお世話を頼まれたが、同居するとは聞いてないっ【第2回「G’sこえけん」音声化短編コンテスト ASMR部門】 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ