わたしのはなし

 それから歩くこと十数分。私と白音先輩はボロっちい2階建てアパートの前に立っていた。


「ほら、着いたぞ」

「……先輩、家ってここなんですか?」

「それ以外にあるかよ。ほら、階段上がるから足元気ぃつけろな」


 短く返すと先輩は外付けの階段を上がって行ってしまった。階段の軋む音におののきながらも、慌ててその後を追う。



 ◆



「狭い部屋だけど、まあ適当に座って寛いでくれ。飲み物いるか?」

「い、いえ。水で大丈夫です……」


 狭いキッチンと、六畳のワンルーム。それが先輩の住まいだった。

 親が死んだ、と言っていたが。だから一人暮らしでもしているのだろうか?

 そんな事を考えていると、向かいに座った先輩が切り出した。


「んで、中学時代の話したい事ってなんだよ?」

「……ええ。それは、あの……」


 そこまで言って、一度唾を飲み込む。

 緊張から喉がやけに乾いていた。


 だが、それでも。

 言うと決めたから。

 ここから、先に進みたいから。




「私は中学の頃、友達を見捨てたんです」

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