永遠のさよならは―――

杜鵑花

第1話 友人

 俺は古くからの友人と居酒屋で酒を飲んでいた。


「それにしても奇跡だよな。まさか零夜とこんな所で会うなんて思ってもいなかったよ。」


零夜というのは俺の名前だ。

因みに友人の名前は竜也だ。俺はタッツーと読んでいる。あだ名というものだ。


「あぁそうだな。旅行先と旅行時期が同じだとはな。奇跡中の奇跡だよ。」


「まぁ、取り敢えず……今日は沢山飲もうぜ。」


俺達は他愛のない雑談をしながら、酒を飲んだ。

久しぶりに会う友人との酒は格別だった。

ある程度酒がまわってきた頃、友人が突然こんなことを言い出した。


「そういえば明日で俺達の学校の近くで起こった電車事故……4周年になるな。」


「4周年って……不謹慎だろ。」


「確か……今までの電車事故に比べてこの電車事故は被害者が極端に少なかったんだっけな。珍しいよな。」


「そんな事故あったっけ?」


4年前ともなると、記憶が曖昧になる。

靄がかかったような記憶……なんとなく、この靄は晴らしちゃ駄目な気がする。


「あったよ!あの事故の後、俺達は友人になったんだろう?覚えてないのか?」


「そうだったような気もする……」


酒がまわっている所為かもしれないが思い出そうとすると頭痛がする。


「お前……大丈夫か?顔色が悪いぞ?」


「大丈夫だ。問題無い。話が変わるが何でタッツーはここに旅行しに来たんだ?」


「ここら辺は観光地も多いし地元も近いしな。旅行にはうってつけなんだよ。そういうお前はどうなんだ?」


「俺は、旅行ガチャでここを引いたんでな。そうか……地元が近いのか……明日辺りに行ってみようかな。」


「旅行ガチャか……よく引く勇気があるな……俺だったら引けないよ。自分が行きたい所に行きたいからな。」


「旅行ガチャなんて、どこが出ても当たりだよ。1度行ったことある場所でも巡る観光地や泊まるホテルが違ったら初めて来たのと変わらないだろ。」


「じゃあ自分が今住んでいる所が出たらどうなんだ?」


「それはハズレだろ。」


「矛盾したな。あははっ!」


俺達は笑った。

心の底から楽しんだ。

だが、楽しい時間はすぐに過ぎ去る。

これは全人類が1度は体験した事があるだろう。

俺はホテルのベッドにダイブした。

部屋の明かりを全部消すと、大きな窓から差し込む街の光が一段と明るくなった。

旅行ガチャの値段が割りと高かった為かホテルはそれなりに良いホテルだった。

枕の高さも丁度良い。

これならグッスリ快眠出来そうだ。

俺は外から聞こえる車の走る音を睡眠用BGMにして眠りについた。


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