第11話 永遠のさよならは訪れ過ぎ去って行く

 俺はは目を覚ました。

今度は電車の中でではなく、駅のベンチで。

寝ていたため電車から無理矢理降ろされたみたいだ。

普通なら怒りが沸き起こると思うが俺の心には怒れる余裕は無かった。

どのくらい眠っていたのだろうか…… 

辺りは既に闇に包まれていた。

虫の声が響き渡る。

もうこんな時間か……行かなくては……あの場所に……

無意識にそう感じた。

あの場所とは何処の事だろうか……

頭では理解できないが体が知っている。

俺は無意識に身を委ねて走り出した。

導くかのように町の街灯が俺の行く道を照らす。

1本、また1本と街灯の横を過ぎ去って行く。

辿り着いたのはあの踏切だった。

俺にとってはトラウマしかない場所だ。

遮断器の前に1人の女の子が立っていた。

俺はその子の事を良く知っている。

彼女は俺に嘘をついていた。

世界はループなんかしてなかった。

それはトラウマが生み出した幻想、つまり夢の中での出来事だった。

俺の無意識はそれを乗り越えようとしていたのだ。

でもその所為で思い出してしまった。

彼女との楽しかった日々の数々を……

また、会いたいと思ってしまった。

また、話したいと思ってしまった。

カンカンカンと踏み切りが鳴り出した。

彼女は石につまづき前に倒れる。

俺はすかさず前に走り出し彼女を押し飛ばそうとした。

刹那、目の前が真っ白で何もない空間に変わった。

そこに、正真正銘本物のカンナが居た。


「零夜さん。救済って何だと思いますか?」


俺の頬から涙が零れ落ちる。

様々な感情が脳を支配する。


「零夜さんはこの選択で本当に救われたんですか?後悔は無いですか?」


俺は黙って頷いた。

今喋っても嗚咽が混じった声しか出せないからだ。


「そうですか。私は零夜さんにはもっと永く生きていて欲しかったですけどね。でもそれが零夜が選んだ道なら文句はないです。さぁ、行きましょうか。」


カンナはそっと手を伸ばした。

俺はその手をしっかり握り締めた。

そして、俺達は歩き出した。

何処に行くのかなんて全く分からない。

けどそんな事はどうでも良い。

これは俺が選んだ道だ。


 救済とは何だろうか……

結局のところ救済とは死か生だ。

生きるか死ぬか……

ただそれだけの違い。

少なくとも俺はこの選択で救われた。

今はその事実だけで良いだろう。

深く考えるとそれは、後悔になってしまうから―――



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永遠のさよならは――― 杜鵑花 @tokenka

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