第2話 チェックアウト

 「ううん……」


俺は朝の光で目を覚ました。

カーテンを閉めるのを忘れていたらしい。

時計を見ると朝の7時半だった。

昨日は寝るのが遅かった為、まだ凄く眠い。

出来ることなら今すぐにでももう1度ベッドにダイブしたい。

しかし、ホテルのチェックアウトをしないと行けないので寝てる暇はない。

チェックアウトをする日の朝はやたらとソワソワする。

チェックアウトは10時から11時の間だ。

まだまだ時間には余裕がある。

いや……朝食を食べたり色々するんだったら結構ギリギリか?


 案の定、ギリギリのチェックアウトだった。

10時59分……後1分だった……

ここでようやく俺はチェックアウトの緊張から逃れることができた。

後はこの旅行を楽しむだけだ。

昨日の1日でこの街の結構な観光地を巡る事ができた。

今日は地元にでも行くかな。

俺はホテル内のソワァーから立ち上がり、ホテルを出た。

街は車通りが多く、如何にも都会という感じだった。

俺は駅まで歩いた。

道中、少し迷いそうになったがなんとかなった。

やっぱり俺には都会は向いていないかもしれない。


「ここが……都会の駅か……」


俺はそう言葉を漏らした。

俺が今まで見た駅の中でもダントツで大きい。

俺は入口にあった地図を見た。

地図は魔王城かと勘違いするぐらい入り組んでいた。


「……取り敢えず切符買うか。」


地図の解読を諦めた俺は切符売り場に向かうことにした。

地元行きの切符を買う。

しばらく行っていなかったものの、地元の名前は流石に覚えている。

確か……片巻町だった筈だ。


「えっと……これか!」


俺は券売機にお金を入れボタンを押した。

するとチケットがするりと出てきた。

手触りの良い紙に片巻町行きと書かれている。

俺はそれを使い、駅のホームに入る。

数分後、片巻町行きの電車が来た。

俺は電車に乗った。

車両には誰も居なかった。

都会なのに……珍しいな。

まぁ、この時期に田舎の片巻町に行く人なんてそうそう居ないよな。

俺は広々とした座席に1人ポツンと座った。

電車に乗ったのは何時ぶりだろうか……

そんな事を考えているとやがて、電車が出発した。

ここから片巻町まで結構な時間がかかる。

スマホはモバイルバッテリーで充電している為使えない。

充電しながら長時間使ったら壊れるという事を何処かで聞いたからだ。

到着までやることがない。

俺はただ前を見つめて待つことにした。

しかし、電車という名のゆりかごに揺られながら何もせずにただ意識を保つというのは俺にはできなかった。






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