第9話 名前
世界と共に歪んだ視界が再び戻ってくると俺が展望台近くの花畑に居ることを理解した。
瞬間移動だろうか……少なくとも現代社会でできる芸当ではない事は確かだろう。
「この花畑が私の名前を思い出すためのヒントです。」
「これがヒントか……花の名前とかかな……前に私の花って言ってたし……」
そう考えると女の子は今まで結構ヒントをくれていたのか。
何故そんな事をするのだろうか……
そもそも思い出すってなんだ?
確かに女の子の事は忘れていたが他に忘れてる事なんてタッツーが言っていた4年前の電車事故の事だけだ。
4年前の電車事故は流石にこのループとは関係がないだろう。
電車事故という共通点はあるんだがな……
「俺は植物博士では無いからこのオレンジ色の花の名前は分からないな……スマホで調べるか……」
俺はスマホで写真を取り画像検索をした。
昔と比べてかなり便利になったと思う。
「えっと……これが1番近いかな……」
俺は検索結果の中から1番近いと思うものを押した。
この花は恐らくカンナという花だろう。
丁度人の名前としても問題がない。
「分かった!お前の名前はカンナだ!」
「正解です。思い出してくれて嬉しいです!!また零夜さんに名前を呼ばれる日が来るなんて夢にも思いませんでした。……うぅ、嬉しくて涙が……」
カンナか……クラスメイトにいたような気がする……
ちょっとずつだが思い出して来ている気がする。
この調子で行けばいいな。
「取り敢えず名前を思い出した訳だが次はなんだ?」
「……そうですね、次は私と零夜さんの関係を思い出して見ましょうか……」
「ちょ、ちょっと待て……名前もそうだがそれとループは何が関係してるんだ?」
「だから!!全部思い出したら分かるんですって!!」
カンナの言う事には色々矛盾が生じる。
そこでこんな事がふと頭によぎった。
カンナは俺に嘘をついている?
だが、嘘をつく動機が無いためその考えはすぐに掻き消された。
今はカンナの言う通りにしてみるか……
「関係って言ったって友達だろう?もし恋人だったとしたら絶対に覚えてるし、久しぶりに会う事もないだろ。」
「別れてるかも知れないですよ?」
「仮にそうだとしたら気まずくなってるだろ……だから俺達の関係は友達だ!」
俺がそう言うとカンナが溜め息をついて近づいてくる。
何をするつもりだろうか。
そう考えている内にもカンナはどんどん近づいてくる。
カンナが互いの体が触れ合う距離にまで近づいてくるとこう言った。
「友達がこんな事しますか?」
そして、キスをした。
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