第6話 展望台
「中学校の正門ってこんなにデカかったっけ?」
「こんなもんですよ。」
俺達は中学校の正門前でそんな事を言っていた。
周りから見たら不審者に見えるだろうか……まぁ、誰も居ないから問題無いか……
……?そういえば俺が片巻町に来てからこのピザ屋の店員と女の子以外誰とも会ってないな……
ここが田舎だからっていう事もあると思うがそれにしても奇妙だな。
ちょっと聞いてみるか。
「なぁ、誰も居なくねーか?」
「今日は休みだから当たり前ですよ。」
「中学校の話じゃなくてな……この町の事だよ。車1台も通ってない。人も居ないし。」
「……田舎ってそういうものですよ。さぁ!次行きましょうか!展望台!」
女の子は無理矢理話題を変えようとしている。
そう感じた。
もしかしたら触れたら駄目な話題だったのかも知れない。
今は一旦置いておいてまた改めて聞くことにしよう。
「行くか……」
俺達は中学校を離れた。
暫くは沈黙の時間が続いた。
お互いに顔も見ようともしない時間。
現実での時間は20分程だろうが体感時間はその100倍ぐらいだった。
しかし、沈黙は突然に終わりを迎えた。
その沈黙を終わらせたのは俺でも女の子でもない。
展望台に向かうための道を進んでいると、開けた場所に出た。
沈黙を終わらせたのはそこで見た花畑だった。
「おぉ……」
俺はそんな声を漏らした。
人間を喋らせるほどの絶景だった。
丁度夕日が差し込みオレンジ色の花を更に色づけた。
この町は夕日が見られる時間が早いのだろうか……
そんな事が一瞬頭をよぎったがすぐに掻き消された。
「この花、私の花なんですよ。」
女の子が花に近づき、そんな事を言った。
私の花とはどういう事だろうか……
「花言葉はいろいろあってその中でも私は『永遠』が1番好きです。」
不意に、頭痛が俺を襲った。
頭が割れるような痛み、何かを思い出そうとしているがそれを脳が否定している感じだ。
「ッ……!!」
「大丈夫ですか?!」
「あぁ、大丈夫だ……」
まだ頭に激しい痛みが残っているが女の子を心配させない為に言った。
「あまり無理しないで下さいね……」
「分かった。そろそろ帰るか……日も暮れてきたし。展望台までは行けなかったけどな。」
「そうですね……帰りますか……」
俺達は来た道を戻り始めた。
帰りは若干下りなので速かった。
そして、町まで戻ってくると日は完全に暮れていた。
「そろそろ解散しますか。」
「暗いし……家まで送って行くよ。」
俺は女の子の家を知らないがこんな時間に1人で帰らせるのは良くないと思い言った。
「ありがとうございます。でも、もう時間なので。後、私の名前、思い出せました?」
女の子はそう言って俺の横を通り過ぎた。
俺の背後では踏み切りが音を鳴らしていた。
俺は頭の中に情報が入りすぎて動けなくなっていた。
そして、グジャァという鈍い音の後に赤い液体が地面に飛び散った。
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