第4話 イタリアンな店

 店の中は静かだった。

客は俺達だけのようだ。

女の子が席に座ったので俺はその向かいに座ることにした。


「このお店……零夜さんと来るのは久しぶりですね。」


女の子のその言葉に俺は疑問を覚えた。

俺は1回この店に来た事があるということだろうか……


「俺……来た事あるんだっけ?」


俺は尋ねる事にした。

多少怪しまれるかもしれないが良いだろう。


「ありますよ!」


女の子は即答した。

どうやら俺の記憶は当てにならないらしい。

ところどころ穴が空いてる……


「ははっ、そうだったな。俺に店の説明をしていたから錯覚が起きたみたいだ。」


だが……前に来たことがある奴に『ここのピザが美味しいんだよ!』なんて説明をするだろうか……

そもそも俺と女の子は一体どういう関係だったんだ?

全く持って思い出せない。

一緒に食事をするような仲か……

恋人という考えが一瞬思い浮かんだが絶対にないだろう。

こんなに可愛いんだ。

俺の恋人な訳がない。


「すいません。紛らわしい説明をして。」


「別に良いよ。それより何を食べる?」


「そうですね……このピザとこの赤ワインにします。」


「昼間からワインか大丈夫か?」


「ノンアルコールだから大丈夫ですよ。其れに……約束しましたし……」


「約束?」


「何でもないです。」


「そうか……じゃあ俺も同じやつにしようかな。ワインは好きだし。」


俺達は呼び出しボタンを押して注文を伝えた。

暫くすると、店内にピザの匂いが香りだした。


「零夜さん……彼女、できました?」


女の子が突然、そんな事を聞いてきた。

俺は少し動揺したがなんとか答えた。

こんな会話をするという事は関係は友達辺りって事だ。

友達が動揺してたら怪しいだろう。


「何言ってんだ?俺に彼女ができるわけないだろ。作る気もない。」


「それはどうしてですか?」


「いや……なんか彼女を作ったら駄目な気がして……」


「そうですか……すいません。こんな質問をして、ちょっと意地悪がしたかったんです。」


俺はホッと胸を撫で下ろした。

いつもこんな会話をしているわけではないようだ。


「おっと……そうこうしていたら来たみたいだな。」


店の奥からピザとワインを2つずつ持った店員が歩いてくる。

よく持てるな……


「お待たせしました。注文にお間違えはないですか?」


「はい。大丈夫です。」


「それでは、ごゆっくり……」


店員は再び、店の奥に帰っていった。


「意外と速かったな。」


「そうですね。早速いただきましょう!乾杯!」


俺達はワインを交わした。







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