対比の中心点には、常に愛がある

 対比がとにかく上手い。

 探偵と助手、という構図ながら。そこには、現場主義でスタンドプレーな刑事として或いは保護者や、過去の事件の被害者、喪った者と埋める者、立場と能力を利用して事件に関わりつつも、思考と行動を交え、補完しながらストーリーを進めるメインキャラクター性を与えている。

 被害者と加害者、大人と子供、先生と生徒、親、とかく母と子の描かれ方も情感溢れるリアルさで真に迫ると感じられたわけだが、各々の家庭が抱える問題。ここは、著者様の後書きから納得のいく説明が得られることだろう。是非、ここまで読了してもらいたい。

 対比、と最初に賞賛した通り。

 それは、描かれる人間関係だけに及ばず。古典に因って現代社会のリアルを捉えることにも成功しており。過去、現在に至るまで、人々は愛を捨てることはなかったと言える。そこに、形、解釈の余地は残すとは言え。

 もうひとつには、携帯――スマートフォン――――リアルタイムネットワークが、ミステリに及ぼした影響は実に大きいと感じる昨今だが。
 物理的接触を介さず繋がれるマッチングアプリを介してひと役買うのもまた、現代における希薄さ、捻れや縺れを、複合的・・・・・・否、ここは積層的と表現する方が良いような気がする。

 積み重なった登場人物たちの『愛』の根底が、引き起こした悲劇でもあり。また人生であり。物語に深みを産み出している、と言えよう。