僭越ながら、まとめてここに感想を記させていただきます。
拙い文章で申し訳ありません。それでも、強く心を揺さぶられた作品で、手が止まりませんでした。
私自身、学生という立場ですが、教員を志望しており、本著で挙げられていた家庭問題、教員の働き方についての話題はよく見聞きしておりました。
特に心に残った点は、教員である以前に1人の父である、という点です。
本著でも描かれているとおり、教員は聖職とも言われ、何よりも学校での子供を第一にするべきだ、というイメージが強く持たれています。しかし、教員側の私生活についてはあまり認識されていません。個の集合体である社会が実情を知る、それが働き方改革における第一歩だと強く感じます。
他にも、本著を通して、気付かされる所がいくつもありました。
私小説とおっしゃられていますが、それでもエンタメ的な構成をされており、本当に読みやすかったです。
哲学や現代社会の問題を多く絡めながら、物的根拠に基づきつつ明かされていく真相はとても読み応えがありました。3つの家庭といえば無粋かもしれませんが、家庭内で生じる愛の在り方も本当に複雑で、まさに「奇」であったとおもいます。
本当に、このプラットフォームでは収まり切れない作品だと思います。
本著を読んだことで、私の今後の生き方が変わっていくような気がします。
素敵な作品をありがとうございました。
対比がとにかく上手い。
探偵と助手、という構図ながら。そこには、現場主義でスタンドプレーな刑事として或いは保護者や、過去の事件の被害者、喪った者と埋める者、立場と能力を利用して事件に関わりつつも、思考と行動を交え、補完しながらストーリーを進めるメインキャラクター性を与えている。
被害者と加害者、大人と子供、先生と生徒、親、とかく母と子の描かれ方も情感溢れるリアルさで真に迫ると感じられたわけだが、各々の家庭が抱える問題。ここは、著者様の後書きから納得のいく説明が得られることだろう。是非、ここまで読了してもらいたい。
対比、と最初に賞賛した通り。
それは、描かれる人間関係だけに及ばず。古典に因って現代社会のリアルを捉えることにも成功しており。過去、現在に至るまで、人々は愛を捨てることはなかったと言える。そこに、形、解釈の余地は残すとは言え。
もうひとつには、携帯――スマートフォン――――リアルタイムネットワークが、ミステリに及ぼした影響は実に大きいと感じる昨今だが。
物理的接触を介さず繋がれるマッチングアプリを介してひと役買うのもまた、現代における希薄さ、捻れや縺れを、複合的・・・・・・否、ここは積層的と表現する方が良いような気がする。
積み重なった登場人物たちの『愛』の根底が、引き起こした悲劇でもあり。また人生であり。物語に深みを産み出している、と言えよう。