空の矢印

バルバルさん

それはそれとして

 皆さんは、雲と聞くと、どんな形のものを思い浮かべますか?


 ふわっとした丸の形でしょうか。それとも、飛行機雲のような線状のもの?


 雲とは空に浮かぶ水蒸気の塊みたいなものですから、様々な形があって当然だと思います。


 ですが、いくらなんでもそんな形になるかな? なんていう形の雲に僕は出会ったことがあります。


 これは小学校当時の僕が、友達の家へ遊びに行こうとした時の話です。


 その友達の家には初めて行くのですが、そこそこ離れているとは聞いていたのに、当時の僕はしっかりと準備していませんでした。


 暑い夏の日で、雲はあれどものすごく蒸し暑かったと記憶しています。


 歩けど歩けど、中々友達の家に着きません。友達から聞いていた道だけど、初めて歩く道なので妙な不安感を感じたことを覚えています。


 喉は渇くし、暑いし、だけど雲の様子から一雨きそうだし……嫌になって、空に叫びました。


「友達の家はどこ?

雨雲はどっちに行くの?

雨は降るの?」


 こんな感じの事を叫んだように思います。するとどうでしょう。そこは山と川に挟まれた道なのですが、山の上の方、雲がゆっくりと動き、矢印の形の雲が現れたではありませんか!


 嘘ではありません。記憶では本当に矢印の形になっています。本当に。


 その矢印が示すもの、それは全く当時の僕にはわからなかったのですが、もしかしたら雨雲が動く方向だったのかもしれません。そして、矢印の示す方向のある道へとずーっと歩いてみることにしました。家々が見えてきたときにはほっとしたことを覚えています。


 まあ、そんなこんなで、道に迷いつつなんとか友達の家に着いたのですが……


 今こうして書いてても、信じてもらえないだろうなぁ……と思ってます。


 雲が矢印の形になるなんて、僕なら信じません。


 実際、矢印型の雲を見た後、しばらく歩いて出会ったおばあさんにそのことを話したら、ものすごく変な顔をされた後に笑われました。


 あの雲は、夏の暑さの見せた幻だったのか。それとも、そこは神社やお寺などが近かったので、神様が「仕方ないな」と何かを示してくれたのか……


 まあ、どちらにせよ、僕は友達の家に到着し、ゲームをして、雨が降る前に帰ったというのは記憶上間違いないと思います。



 それともう一つ。



 ふと思い出したのですが、友人の家に向かう道は川沿いと山々の間を走る一本道です。


 脇道に短くそれることはあっても、迷うほど道は入り組んではいないのです。



 なら、僕はどこの道を迷ってたのでしょう?



 実際、その次のタイミングで友達の家に遊びに行った時は迷うことも無く、真っ直ぐ着きました。


 全く別の道を歩いていた? いいえ、その道に入るには、神社の横にある踏切からしか入れません。


 その踏切を通って、道なりに真っ直ぐ進むだけで、友達の家につくはずなのです。


 当時は子供だったから、道が長く感じただけでしょうか?


 そうかもしれないし、そうじゃない気もします。


 何故なら、友人の家に向かった時間と、帰った時間が違ったから。帰り道、あれ、こんなに早く帰れるんだ?なんて首を傾げたことを覚えています。


 山と川沿いの道で、下り坂だったから楽だっただけかもしれないし、もしかしたら本当に別の道を行っていたから、帰り道が短く感じたのかもしれない。


 別にその道には子供が迷子になったりするような伝承は無いので、少々怖いですが異界とか、別の世界に迷い込みかけていた……なんてことは無いと思うのですが。


 もし、本当にその道が、本来とは別の道だったとしたら。僕はどこに行こうとしていたのでしょうか。


 なら、あの矢印型の雲は、僕に正しい道を示してくれたのでしょうか。それに従っていなかったら?



 ……書いていて気が付いた、そんな話を添えて、子供の頃の自分の無事に安堵しつつお話を締めたいと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空の矢印 バルバルさん @balbalsan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ