物心ついた頃からの乗り物オタクが80年代終わり頃からのF1ブームに乗せられてレースの世界を知り、その後に高齋正氏の作品群に触れて「レースマシンを作り上げ機能させるためには、どれだけの知恵と工夫と労力と思い切りが必要か」という描写に痺れ、ル・マンやパリ・ダカに傾倒しながら、あまりにもF1に記事が偏りすぎていることに不満を持ちながらもオートテクノ誌を読み漁る、そんな学生時代でした。
しかしその後、なかなかこの辺を掘り下げてくれる作品は少なく、食い足りない思いをし続けていました。
そんな中で、ふとした弾みで見付けたのがこちらの作品でした。
時は第二次世界大戦前の1930年代とあって、現代とは勝手の違う描写もありますが、それがまたこちらが勝手に分かったつもりになって読み進めてしまうのを上手いこと止めてくれます。
そして数多の制約がのしかかってくる中で、マシンを構成する各要素、チームを作り上げてゆくときになぜそれを採用したのか、それがもたらすものは何なのか、その上で何が足りなかったのか、といった部分が紐解かれてゆくのが個人的にとてもツボに入りました。
ここから94RCはどんなマシンになってゆくのか、ツクバはどんなチームに育ってゆくのか、とても先が楽しみな作品です。
次回更新も楽しみにしております。
フォーミュラカーレース、モータースポーツ……そのジャンルについて、お恥ずかしい話ですが、私はほとんど知識がありません。
でも、この作品は読めてしまう……それがどういうことなのか、「そのジャンルに詳しくなくても読める」って……本当に面白くて、興味を持たせられる証拠なんですよ!
実際、作中には「詳しくない方を想定したと思われる、必要な情報が分かりやすく説明されている」……何も知らなかった私でも、少しずつ勉強できていくほどです。
モータースポーツに関して詳しいという方は、そう多くはないと思います。
だからこそ、この作品を通して、楽しく興味深く知っていくことが出来るのは、なかなかに得難い体験だと思いました。
モータースポーツへの理解に、ある種の「架空戦記」の形式で一石を投じていく作品……。
このジャンルに詳しくなくとも、あるいはだからこそ、是非ともご一読いただきたいです!
よくある「あの時あの人物がこう決断していたら」とか「(転生などで)未来の知識を持ち込んで行動したら」といったものではなく、その時代に合った技術・時代背景を基に「こんなアプローチでモータースポーツに参画する人たちがいたらどうなる」という感じの話になっています。そのため時代を無視した突出した要素(いわゆるチート)はありません。
創作なので当然嘘がないわけではないのですが、極力史実に沿った技術・知識に基づいてというのに大変なこだわりを感じます。
技術の描写が詳細で、設定した目標や発生した問題点に対していかに解決していくか、という技術的なアプローチの過程に興味が持てるなら、面白く読めると思います。
一方で小説の楽しみの一つに登場人物へ感情移入して感動したりハラハラしたりといった部分がありますが、第一部で国産フォーミュラーカーの開発が中心で、感情面では物足りないかもしれません。
第二部になると実際にレースに参加するようになり、感情面でも面白くなりました!
参加してみて初めて認識した問題にいかに取り組むか、他チームとの駆け引きなど、心情面でも楽しめるようになってきました。
今後も期待しています。
私のような軍クラでおこぼれをスライムのように咀嚼してきてた卑しい人間にとって、著者はエンダードラゴンの如く光り輝く存在でして。色々な場所でその技術的知見やどこで手にしたのかのネタ等ありがたく頂いてたものです。そのような異世界転生物で言うとこのS級冒険者とも言える方がなんの拍子か、「え?小説書いてるの?」と知り、そら読みますわ。
いやぁ、すごい技術のネタ。
そうだよこれを私は求めてたんだよ。
こんな架空戦記をほしてたんだよ。
在り来りの物に飽きた方へ、
濃厚な琥珀色した芳醇な香りの数年寝かした蒸留酒の如く作品です。
この著者が時折そこらかしらに数年に渡って輝きを持って放った技術的ネタがここに詰まってます。
そして私はただ酔いしれる