レースの「なぜ」が詰まった作品

 物心ついた頃からの乗り物オタクが80年代終わり頃からのF1ブームに乗せられてレースの世界を知り、その後に高齋正氏の作品群に触れて「レースマシンを作り上げ機能させるためには、どれだけの知恵と工夫と労力と思い切りが必要か」という描写に痺れ、ル・マンやパリ・ダカに傾倒しながら、あまりにもF1に記事が偏りすぎていることに不満を持ちながらもオートテクノ誌を読み漁る、そんな学生時代でした。
 しかしその後、なかなかこの辺を掘り下げてくれる作品は少なく、食い足りない思いをし続けていました。
 そんな中で、ふとした弾みで見付けたのがこちらの作品でした。
 時は第二次世界大戦前の1930年代とあって、現代とは勝手の違う描写もありますが、それがまたこちらが勝手に分かったつもりになって読み進めてしまうのを上手いこと止めてくれます。
 そして数多の制約がのしかかってくる中で、マシンを構成する各要素、チームを作り上げてゆくときになぜそれを採用したのか、それがもたらすものは何なのか、その上で何が足りなかったのか、といった部分が紐解かれてゆくのが個人的にとてもツボに入りました。
 ここから94RCはどんなマシンになってゆくのか、ツクバはどんなチームに育ってゆくのか、とても先が楽しみな作品です。
 次回更新も楽しみにしております。

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