パラレルワールド

「おい! タケル! 俺さ、パラレルワールドにいるみたいだ!」


 タケルは一旦、耳から電話を離す。友達のカラの声が、想像以上にうるさくてどうでも良いことだからだ。


 いつも馬鹿なことを言う友達だから、変なことは言うとタケルは思っていた。

 今日は特別回なのか、カラはパラレルワールドの話を始めた。


 タケルはため息を吐いて、相手に向かって話す。


「カラ……。朝っぱらから何言っているんだよ……」

「だってさ! ここの場所、俺がいる場所と違うんだよ!」


「……たとえば?」

「さっき本を横に置いて寝てたのに、起きたら縦になってた」

「……寝ぼけているだけでは?」


 タケルは呆れている。友人のバカみたいな行動で朝早く起こされたからだ。


「あとはゲームの環境キャラが最弱キャラになって、今まで弱かったキャラが、ゲキ強環境キャラになっていた。逆転しているんだよ! 今まで、ゲキヨワキャラだったのに!」


「あぁ、スポンジサッカーガブンド? この前アプデ来たよ……」

「え?! ガブンドアプデ来てたの?! 一年放置してたからわからなかった……」


「そのぐらい調べとけよ……」


 電話をしながらご飯を食べるタケル。トーストにはベーコンとチーズが乗っかっている。


「あとさ、タケル。値段が変わっていたんだよ!」

「そうなんだ」


 電話の外で無表情になるタケル。それでもカラは冷や汗をかいて焦っていた。


「いつも食べているスナックが二十円から三十円になってたんだよ!」


「……1ヶ月前に値上げのニュースあったぞ。初めての値上げで」


「……あとはいつのまにか百円玉が結構入っていた! この前ゲーセンで使い切ったのに……」


「昨日、百円玉使い切ったから、千円使って両替しただろ?」


「……あっ、そうだった」


「全く……くだらんこと言うなよ。パラレルワールドなんてそう言うバカみたいなことを……」


「……え? もしかしてパラレルワールドじゃない?」

「そうだ、寝ぼけるなよ。学校そろそろ始まるだろ?」


「……学校?」

「あぁ、それじゃ切るぜ」


 タケルはマイク型電話をスライドして切る。

「まったく、全然パラレルとか……アホだろ。さて飯食って、学校行くか」


 タケルは食事を続ける。サーモンのベーコンとゾウの乳から搾ったチーズを口の中に入れる。


「……やっぱりマグロのベーコンの方が美味しいな……。こっちもこっちでスパイシーで美味しいけど」


 時計は三十二時をすぎていた。

「三十二時か……、始まるのが三十三時七十五分だから間に合いそう」


 タケルは食べ終わり、ひし形のカバンを持ち、出ようとする。

「金いくら持ってたかな?」

 彼が財布を開けると、千円玉硬貨と十円札があった。


「……千円玉が二枚と十円札が八枚か。十円札あればバスには乗れるか」


 タケルは窓から出て、頬を叩いてバスを呼ぶ。

「バスこーい! 今から学校で働くんだ」


 すると、目の前にはクジラみたいな飛行船が現れる。

 紺色の帽子に白いスーツの女性が飛行船から現れる。


「どちらまで?」

「サラミン山高等学級園まで」


「今日からバスは四十円になったよ」

「まじ?! 値上がりしてるじゃん。この前十円だったのに」


「仕方ないよ。法律で成人年齢が六十歳から四十五歳まで下がったから」

「でも高校生は変わらないんじゃ?」

「それにしたがって、高校生も二十一歳からになったんだよ」

「ということは、俺が二十二歳だから……そうなるよな。二十五歳まで十円だったのに」



 タケルはクジラ型の乗り物に乗り、出発させる。飛行船は学校に向かう。


「今日は朝から働かなきゃいけないからな。ったく、毎日働かなきゃいけない学生は辛いわ。大人になって会社で国語や算数を勉強したいよ」


 タケルは手をパンパンと叩き、丸いテレビが現れる。

「ニュースでも見るか」


 ニュースを観ると、パラレルワールドから来た人たちの特集が放送させている。

 どうやら、パラレル世界にやって来た人は千円札や十円玉が主流で、十八歳から成人の話をしている。学生は勉強して、成人している人は会社で働くみたいだ。


 タケルは鼻で笑った。


「馬鹿馬鹿しい、そんな世界あるわけないのに……。それだったら二万円札ぐらいあるだろ。この世界で言うところの五万円玉、十万円玉みたいな」


 タケルの日常はここから始まる。

 青い空からどんどん紫色に染まって、この世界線の朝が始まる。いつもと変わらない平和な日常が。

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