エピローグ

 翌年の、夏。

「星夜、助けて~!」

 その声とともに、朝乃がドアをバンッと開けて部屋に入ってくる。

「まさ先生の課題、多すぎだよ! 星夜もそう思うよね!?」

「毎日コツコツやってれば終わるだろ」

「星夜よりわたしの方が、部活で忙しいんですー!」

「はいはい、とりあえずそこに座って課題を出せ」

「やった! ありがと、星夜!」

 四月から、おれたちは同じ高校に通っている。とはいっても、クラスは違うし部活で登下校もあまり一緒にはできない。

 それでも、と思いながら、小さなテーブルに課題を広げる朝乃を見やる。

「何ニヤついてるの? 早く教えてよ」

「教えてもらう側が偉そうに言うな」

 見上げてそう言う朝乃に向けてぴしゃっと言うが……そうか、おれの表情はそんなに緩んでいるのか。

 おれは表情を引き締めて朝乃のななめ前に座り、課題をのぞきこむ。

「まずは数学だな。その問題は、まさ先生の……」

 クラスが違っても、登下校を少ししか一緒にできなくても、夏休みの課題は一緒にできる。

 それだけでおれは、うれしかった。


(終)

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夏休みが終わるころ こむぎこちゃん @flower79

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