第2話
転校生~相川愛歌~
暖かな日差しがカーテンの隙間から俺の顔に降り注ぎ、その明るさに目が覚めた俺は、ゆっくりと体を動かして体を起こしてから背伸びをした。すると、丁度扉の向こうから声が聞えてきた。
『お兄ちゃん!起きてる~?』
「起きてるよぉ~」
『じゃあ早く起きて来てね!ご飯できているから!!』
「分かった」
廊下から妹の夢奈の声に答えながらベッドから起きて服を着替えて部屋を出て、準備を整えてからリビングに向かうと、テーブルには既に朝食が並べられていた。自分の席に座ると向かいの席に夢奈が座り笑顔で話しかけてきた。
「それじゃあ頂きます!」
「頂きます」
2人して夢奈が作った朝食を食べ始めた。相変わらず夢奈が作る朝食は美味しく、同時に俺は朝だけは起きるのがどうしても遅くなってしまう為、基本的に夢奈に作ってもらっている。
「今日も夢奈の朝食は美味しいよ」
「ありがとう!でも、たまにはお兄ちゃんが作ってくれても良いんだよぉ?」
「……か、考えさせて頂きます」
「ふふっ♪」
他愛のない会話をしながら朝食を食べ終えると、一緒に片付けを行ってから準備を済ませてから鞄を持ってから家を出て外で待っていると、少ししてから準備を終えた夢奈が家から出てきた。
「お待たせ♪行こう!お兄ちゃん」
「あぁ」
夢奈と共に家を出た俺は一緒に通学路を歩き出した。桜が満開に咲いている桜並木の通学路を2人して並んで歩いていた。
「そう言えばお兄ちゃん聞いた?今日ウチの学校に転校生が来るんだって!しかも2人も!」
「そうなのか?でも夢奈は昨日入学式をしてクラスが決まったばかりだろう?なのに、その翌日に転校生か?」
「そうらしいの。なんでも本当は昨日のタイミングで入学するはずだったんだけど、学校側の都合で今日にしたらしいよ」
「学校側の都合か。一体どんな都合が在ったんだろうな?」
「う~ん、なんだろ?でも学校側のって言うのが気になるよねぇ~」
学校側の都合、その一言だけでも明らかに違いが起きていると言う事なのだが……、一体どんな理由なのだろう?
「まぁ、考えても分からないけど。でもきっとその2人って何かあるんだろうな」
「ね~。あ!そう言えばね!」
そこからも他愛のない会話をしながら学校へ向かって歩き、少しすると前方に学校が見えてきた。それと同時に数人の先生が校門前に立って生徒たちに挨拶をしていた。
「先生!おはようございます!!」
「おはようございます」
「おはよう!良い挨拶だな!」
先生からの返事を聞いて照れている夢奈と共に下駄箱に向かい、それぞれの下駄箱に自分の靴を淹れて上履きに履き替えると、一緒に階段を登り2階に到着した。
「それじゃあお兄ちゃん!また後でね」
「あぁ。また後でな」
夢奈と別れた後、俺は自分のクラスである1組の教室に向かい教室に入った。教室に入り入り口近くに居た女子たちに挨拶をしてから自分の席がある窓際の席に座った。すると前の席の椅子に和人が座って話しかけてきた。
「おはよう、今日は珍しく早めの登校だな?」
「あぁ。今日は夢奈と一緒に登校して来たから、少し家を出るのが早くなったんだ」
「なるほど、夢奈ちゃんと一緒ならば確かに早く来れるな。そうだ!この際だし、これから毎日夢奈ちゃんと一緒に登校したらどうだ?」
「確かにありだとは思うけど、毎日一緒に登校しているとどちらかがシスコンって勘違いが生まれないか?」
「いや、流石にそれは考えすぎだと思うが……」
「おはよ~!2人とも、何の話しているの?」
「おはよう、いや実はな……」
教室に入ってきた沙織が自分の机に荷物を置いてから、俺の咳に近づいて話しかけてきた。和人が説明すると沙織は笑い出し、そのまま俺の机に腰掛けてから話しかけてきた。
「いやいや、流石にそれはないよぉ~!気にし過ぎだって~」
「そうなのか?と言うか俺の机から降り——―」
その時、俺は偶然にも気づいてしまった。今の沙織の状況は俺の机に腰掛けている状態である。それはつまり、俺の視界には沙織の下半身、主にスカートの裾辺りからちらちらと見えている太腿が見えている。しかも、机に腰掛けている事によってスカートの丈が短くなっているため、太腿の奥の方が見えそうになっているのだ。つまり……。
(さっきからちらちらと白いのが見えているんだけど!!)
「どうかしたの夢歩?急に黙っちゃって」
「い、いや!何でもない!!そ、それよりも、聞いたか?転校生の話」
「転校生?あぁ!そう言えばこの学校に転校生が2人来るって言うのは知っていたけど、1人はうちのクラスだっけ?でも、どうしてこの時期に?2日前に始業式をやったばっかりなのに」
「確かにな。だが、このクラスに転校生を迎え入れることにした理由は何となく察することはできると思うぞ?」
「……確かにな」
和人の話を聞きながら俺は教室の一か所、真ん中の席に目を向けた。そこにはあの事件の被害者であり、自身の彼氏に裏切られた人物である鈴木さんが数人の女子と仲良く話していた。
俺たちが解決したあの事件は、この学園に大なり小なり傷を残していた。特に大きな傷となっているのはこの事件の犯人と協力者、そして未遂とは言え被害者の3人が同じ学校に居たのだ。俺が鈴木さんの方を見ているのに気が付いたのか、和人が捕捉するように話し出した。
「唯一の救いなのは、加害者と協力者の2人がこの学校を去ったことだろうな。それに、この転校生の件によってあの事件の話題も一気になくなったろう?」
「……確かに、そうならば良いな」
俺が呟きながら鈴木さんの方を見ていると、俺の視線に気が付いたのか周りにばれない様に、微笑みながら小さくこちらに向かって手を振ってきた。その姿に彼女はもう立ち直ったと感じ取った。
「あの調子ならばもう大丈夫だな」
「そうだな。そう言えば転校生のについての情報があるんだが、聞くか?」
「情報?一体なにかあったの?」
「それが—――」
和人が答えようとした丁度にチャイムが鳴って、教室に担任の先生が入ってきた。クラスの中で騒いでいた生徒たちがそれぞれの席に座った。そして、全員が席に着いたのを確認した担任が教壇に立ってから話し出した。
「皆~、おはよう!もう皆も知っていると思うけれど、今日は皆に転校生を紹介します!」
「先生~!転校生は女子ですか~?男子ですか~?」
「転校生はぁ、女子ですよぉ~」
「「「「うおおおぉぉぉぉぉ—―—―!!!」」」」
先生の返事にクラスの男子たちが喜びの雄叫びを上げ、女子はそんな男子たちを冷たい目つきで見つめていた。盛り上がっているクラスに向かって先生は注意をしてきた。
「はぁ~い、皆さん。確かに転校生は女子だけど、その前に皆さんにこれから約束してほしいことが在ります。先ず、これから入ってくる転校生さんと写真を撮ることは大丈夫ですが、その写真は絶対にSNS等にアップしないで下さい。勿論、盗撮も駄目です。それと—――」
(随分とSNS関係に関して強く注意喚起してくるな。何かあるのか……?)
「それじゃあ、早速中に入って来てもらいましょう!相川さ~ん、入って来て~」
「は~い」
先生の合図に答える返事と共に廊下の扉が開き、廊下から1人の女子がクラスの中に入ってきた。女子が黒板に自分の名前を書いている間に先生が話し出した。
「今日からこのクラスに転校してきた”相川愛歌”さん!皆、仲良くしてね!相川さん、自己紹介、お願い」
「はい!」
先生に呼ばれた転校生、相川さんは俺たちの方を見て笑顔で自己紹介を始めた。
「皆さん、初めまして!“相川愛歌”と言います!お母さんの都合でこの市に引っ越して来ました!趣味は読書と音楽鑑賞、それと絵を描くことと散歩です!特技は裁縫と刺繍です。皆さん、これからよろしくね!」
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/IKUSA_SAIKA/news/16818093078082721009
「…………」
相川さんの自己紹介が終わったが、先程の様な騒ぎが一切無くなり代わりに静寂が教室を包んでいた。その反応に先生が少しあたふたし始めた直後。
「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!び、美少女だぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
男子生徒たちの喝采の様な歓喜の声が廊下にまで響き渡り、それに反比例するように冷たい眼差しを向けていた。そして男子たちの声が落ち着いてから先生が話し出した。
「は~い!相川さんへの質問タイムは休み時間にしてねぇ~。それじゃあ、相川さんの席は後藤君の隣で良いかしら?」
「はい!」
先生に向かって答えてから、俺の隣の空いている席に座って明るい表情を俺に向かって話しかけてきた。
「これからよろしくね♪後藤君」
「よろしく、相川さん」
互いに挨拶を交わしてから、相川は鞄の中の荷物を机の中に入れ始めていた。それを横目に俺も授業の準備を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます