第一章~夢を見る少年は、ミステリアスな天然少女の葛藤を知る~

プロローグ

「引っ越し~新天地にて~」


 暖かな光が眠っていた私の顔に優しく降り注ぎ、私の意識が徐々に夢心地から現実に覚醒し始めた。うとうとしている私の耳にアナウンスが聞えてきた。


『次は、夢野浜、夢野浜です』


「お姉ちゃん、もうすぐ降りる駅に着くよ。早く起きて」


 不意に隣から私の事を起こそうとする声と共に体を優しく揺すってきた。その2つによってゆっくりと意識がはっきりしてきた私は自分が今電車に乗っている事を思い出して、私の隣には愛しの妹の『しぃちゃん』が座っていた。


「んん~……。おはよう、しぃちゃん」


「おはよう、お姉ちゃん。そろそろ降りる駅に着くから、荷物を持って」


「あら~。もうすぐ到着するのね?分かったわ~」


 しぃちゃんに答えてから立ち上がると、私が眠っていた間ずっと持って居てくれたのであろう、私の荷物が入った水色のキャリーバックを押して私に渡してきた。お礼を言って受け取ると、しぃちゃんは足元に置いていたギターケースを持ち上げながら立ち上がり、そのまま背中に背負うとしぃちゃん用の黒のキャリーバッグを押して入り口に向かい出した。私も後を追って立ち上がりしぃちゃんの後を追うと、丁度駅に到着して扉が開いた。


「ほらお姉ちゃん、早く降りよう」


「えぇ!」


 電車から降りて、駅のホームを見渡しているとさっさと階段に向かって歩き出していたしぃちゃんが声を掛けてきた。


「お姉ちゃ~ん!早く行くよ~!!」


「は~い♪」


 しぃちゃんに答えてから荷物を持って、しぃちゃんの声の方向へ向かって行こうとして……、反対の方向へ向かって歩き出した。


「お姉ちゃん!!こっち!!こっちだから!!そっちは反対!!」


「?あらぁ?」


 しぃちゃんに注意されて自分が進もうとしていた方向が逆だったことに気が付き、急いでしぃちゃんの方へ向かった。そしてしぃちゃんの元に着くと、しぃちゃんは私の手を握ってから歩き出した。


「叔父さん。もう迎えに来ているらしいから、駅を出たら先ずは叔父さんを探そう」


「そうなのね!分かったわ、それにしても叔父さんに会うの何年振りになるかしら?」


「確か……、お母さんの話だと5年振りだって言ってたよ」


「そうなのね!叔父さん元気かしら?」


「どうだろうね。取り敢えず会ってみよう」


「そうね!」


 改札を抜けて駅を出ると何処か懐かしさのある街並みが広がっていた。5年振りに戻って来た場所を見渡していると、不意に私たちを呼ぶ声が聞えてきた。


「お~い!2人共~!」


「あ、お姉ちゃん。あそこに居るのが叔父さんじゃない?」


「えぇ、間違いないわ!お~い、雅也叔父さ~ん!」


 私は迎えに来てくれた叔父さん、相川雅也叔父さんに向かって手を振りながら近づくと、叔父さんは笑顔で話しかけてきた。


「久し振りだな愛歌ちゃん!元気にしていたか?」


「はい!叔父さんも元気そうで!!」


「俺はいつもと変わらないさ。隣に居るのはもしかして詩音ちゃん?」


「……叔父さん、もしかして私の事分からなかった……?」


「す、済まん!!何せ2人に最後に5年前だったから、詩音ちゃんはまだ小学5年の子供だったから、まさかこんな可愛くなるとはね~」


「お世辞を言っても許さないよ?叔父さん?」


「ぐっ……。あ、後で何か奢るから許して」


「じゃあパフェで」


「わ、分かった。後で奢るよ。それじゃあ荷物を渡してくれ。車に積むから」


「は~い!あ、叔父さん。私にもパフェ奢って下さいね?」


「あ、愛歌ちゃんまで……。はぁ、本当、口は災いの元だぜ……」


 項垂れながら呟いている叔父さんを無視して、しぃちゃんは自分のキャリーバッグを叔父さんに渡していた。私も叔父さんの元に近づいて自分のキャリーバッグを差し出した。叔父さんはそれぞれのバックを車のトランクの中に積むとそのまま運転席に向かった。私たちも車に向かい、しぃちゃんは後部座席に私は助手席に座った。私たちが座るのを確認してから車のエンジンをかけて目的地目指して車を走らせた。


 ☆


 駅から出発して懐かしい街並みを車で移動すること5分程経った頃、私たちを乗せた車がとある建物の近くで停まった。叔父さんはエンジンを停めると私たちの方を見て話しかけてきた。


「そら、着いたぞ。此処が目的地の場所だ」


「此処が目的地ですか?」


 しぃちゃんが首を傾げながら目の前にある建物を見つめていた。その建物は見た目は洋風な造りとなっていた。そして入り口の前に看板が出ていてそこにこの建物の名前が書かれていた。


「喫茶”スピラーレ”?此処って喫茶店ですか?」


「そうだ。そして此処が今日から2人の住む場所だ」


「「え、えぇ~~~!?」」


 私としぃちゃんの驚きの声が重なり辺り全体に響き渡った。だけど、このお店での生活がこれからの私の人生と過去に深く関わってくることになるなんて、この時の私は分からなかった……。

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