第3話
3日前の話(前編)
前回のバトル漫画的な展開になってしまったが、どうしてそうなったのかの説明をしなければならない。事の発端は3日前の夜に遡る……。
☆
3日前の夜。いつもの様に妹と共に夕食を食べ、その後に一緒に戯れてから風呂に入って自室に戻り、軽く明日の授業の予習をしてから歯を磨きながら明日の準備を済ませていつもの時間で眠りに就いた、はずだった。
「……んん?」
俺が目を覚ますとそこは公園の入り口に立っていた。どうして公園の入り口に立っているのか?何時公園に移動したのか?そう言う疑問を持つのが普通なのだが、俺は辺りを一度見渡してから公園の中に入った。公園に入って一番最初に俺が感じたのは違和感だった。
(人が1人も居ない……。それに、公園の外の景色もどこか歪んでいる様に感じる……)
公園の中には俺以外の人が見当たらなく、それどころか動物すらも居ないのだ。更に公園の周りの景色も心なしか歪んでいる様に見える。そんな公園の中を歩いていると不意に女性の叫び声が聞えてきた。
「叫び声……?」
声の聞こえた方に向かって歩き出すと先に公衆トイレが見えてきた。嫌な予感が脳裏に浮かんだ。そしてその予感は公衆トイレに近づくほど現実味を帯びてきた。そして公衆トイレの入り口に着いた俺は、そのまま声のする男性トイレの中を覗き込んだ。すると、そこにはボロボロになって床に倒れている男子を数人の不良があざ笑う様に見下ろしていた。そしてその背後では更に複数人の不良たちが壁の方に集まって誰かを囲んでいる様に見えた。
「……はぁ……」
大きく溜息を着いた俺は覗き込むのを止めて、そのまま堂々と中に入った。
(こんな現場の中に堂々と入ったら全員こっちを見るはずなんだけど……)
「誰もこっちを確認するどころか見向きもしないと言うね。分かり切っている事とは言え、これじゃあリアルさが欠けるだろうに……っと、失礼」
俺は倒れている男子を躱して不良たちの間を通ると、そのまま壁の方まで歩いて行き囲んでいる中を確認した。すると、そこには服が破れて全裸にされ不良たちによって汚されている女子高生が居た。彼女は目に涙を浮かべながら目の前で動けなくなっている”彼に”助けを求めていた。まるで目の前に居る俺には気付いていない風にも見えた。
(この女子高生がもう1人の被害者か……。可哀そうだがこれで被害者たちと不良たちの顔が割れたな)
「……、この様子だと、そろそろか」
被害者と不良たちの顔を核にしていると、急に浮遊感を感じると同時に彼女の口から彼を絶望の底に突き落とすような言葉が出て、次の瞬間彼の口から絶望に染まった絶叫がトイレ内に響き渡ると、その絶叫の衝撃に俺の体が浮き上がりそのまま後方の入り口に向かって吹き飛んで行った。そしてそのまま公園の外にまで吹き飛ばされ、俺の体は空高く飛んで行った……。
☆
ビクンとベットの中で体が跳ね上がる感覚と共に目を覚ました俺は、ゆっくりと体を起き上がらせてから深呼吸をした。深呼吸をしながらさっきの光景が俺が見ていた夢だった事を認識した。
(さっきのが俺の見た夢で間違いない。そしてさっきの夢には被害者の顔と問題の不良連中の顔も分かったし、これで対策が取れる……!)
『お兄ちゃん、起きてる~?』
「あぁ、今起きたよ」
『じゃあ早く降りて来てね~!朝ご飯できているからぁ~!』
「分かった!!」
廊下から聞こえてきた妹の声に返事をしてからベッドから立ち上がり、充電していたスマホを起動してグループチャットを起動して打ち込んだ。
『今日の昼休み、屋上に集合してくれ。例の夢に進展があった』
『了解』
俺の返信に答えるように和人からはコメントを、沙織からはコメントの代わりに犬が可愛く了解と答えているスタンプが送られてきた。2人の返事を確認してから俺は朝食を用意している妹の元に向かう為、部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます