第2話

「茂みの中で……」


「はぁ~」


 物語開始直後から、大きな溜め息を零す主人公を見る事になり読者の皆は困惑している事だと思う。だが、考えてみて欲しい。誰が嬉しくて公園の一角にある茂みの中に隠れて早1時間、ずっと身を潜めているのだ。その間動こうにも動けないまま、ただ目的の人物が此処に現れるまでずっと隠れているのだ。だが……。


 (……そろそろ来てくれても良いんじゃないか……?)


 心の中で愚痴を零していると、不意に俺のポケットの中にあるスマホが振動を始めた。スマホを取り出して確認してから電話に出た。


「和人か?」


『夢歩、ちゃんと隠れているんだろうな?』


「……あれこれ1時間ずっと茂みに隠れて居るんだが?」


『ならば良し。こちらは今2人が公園に入ったのを確認した』


「……了解、沙織の方は?」


『こっちもさっき別の入り口から公園に入ったよ。多分、そのままそっちに向かうと思う』


「分かった。それじゃあ作戦通りに目的地に到着後、動くぞ」


『あぁ!』


『うん!』


 2人の返事を聞いてから通話を切り呼吸を整えながら待っていると、左側から目的の人物たちである男女ペアが仲睦まじい姿を見せながら歩いてきた。そして向かいからは不良生徒たちが見えてきた。


(さてと……)


「ふぅ~……、よし」


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせていると、不良たちが2人の周りを囲む様に動き始めた。そして、完全に囲むと早速因縁をつけ始めた。


 (何とか予定通りになっているな……)


「……行くぞ」


 小さく呟いたと同時に茂みの中から飛び出し、不良たちの背後に姿を現すとそのまま挑発的な口調で話しかけた。


「おいおい、な~にやってやがるんだ?お前ら」


「あぁ?なんだてめぇ……?」


「邪魔すんじゃねーよ!」


 不良たちの関心が俺に移り始めているのを感じながら、俺は囲まれていた2人に目配りをすると、女子の方が気が付き彼の腕を引いて不良たちから離れるように走り出した。目的としていた女子に逃げられたことに対して更に怒りが増したのか、不良たちの取り巻きが俺の前に出てきて苛立ちを籠めながら話しかけてきた。


「おいおい、お前のせいであいつに逃げられちまったじゃねぇかよぉ~、どうしてくれるんだよ?折角この後あのひょろ眼鏡ボコってから寝取ってやろうと思ったのによぉ~!!全部台無しじゃね—かよ、おい!!」


「知るか、勝手に俺のせいにするなよ。それによ、彼氏が居る女子を寝取ろうと思った時点で時分はモテませんって言っている様なもんじゃね?」


「あんだとてめぇ!!」


「お前ら!こいつを囲め!!」


 俺の一言が癇に障ったのか、全員が俺を囲む様に動き始めた。そして完全に囲むと俺の前に不良たちのリーダーらしき人物が現れて、俺にガンを飛ばしながら怒気を籠めて話しかけてきた。


「てめぇ……、さっきから舐めたこと言っているけどよぉ、余り舐めたこと言っていると殺すぞ?こらぁ!!」


「だからぁ、そんなにデカい声で喚くなよ、五月蠅いなぁ。そんなにデカい声を出さなくても聞こえているっての。それに、そんなにデカい声で威勢だけ張っているけどさ、1人相手に囲んでいる時点で時分は1人じゃタイマンもできませんって言っている様なもんじゃね?」


「……ッ!!どうやら本気で死にたいらしいなぁ!!てめぇら!やっちまえ!!」


 リーダーの命令を合図に囲んでいた連中が一斉に殴りかかってきた。それを目視で確認しながら俺も応戦するように、最初に殴りかかってきた奴の顔面を殴ると、そのままの威力を保ちながら地面に向かって叩きつけた。その光景に殴り掛かろうとしていた連中たちはそのままの態勢のままで呆然となり、リーダーですら信じられない物を見た様な表情になっていた。それを瞬時に確認した俺はそのまま近くの不良に向かって再び殴り掛かりに行った……。

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