第4話
「店でのひと時(店内)」
「それでね!今日の学校でね~」
「お姉ちゃん、それは……」
「あはは、相川先輩面白い~!」
お店までの帰り道、道筋を教えながら一緒に帰っている俺たちだったが、すれ違う人たちが皆俺たちの方を振り向いて見つめていた。特に、男性は何度か俺たち(と言うか相川姉妹)に声を掛けようとしていた。その都度先を歩いていた俺が少し歩くスピ—ドを遅くしてさり気なく3人に近づいて軽く話しかける様にして追い払った。
「それにしても、お兄ちゃんが近くに来ただけで話しかけようとする男性たちが退散していくよ~」
「本当、申し訳ないけれどありがたいね」
「そうなの?確かにさっきから私たちに話しかけようとしていた人たちが止めていたけど?」
「先輩のお蔭で私たちにナンパしてくる奴が居ないんだから、後で感謝しなきゃだよ?お姉ちゃん」
「そうね、そうしましょうか!」
「……あ~、楽しく話しているところ悪いが、目的地に到着したぞ」
後ろで3人が楽しく話しているのを他所に、俺たちは目的地である商店街の中にある喫茶店、『スピラ—レ』の前に到着した。
「着いたぞ。これがお店から学校までの通学路だ」
「なるほど、これで明日から迷わずに学校に行けそうです。ありがとうございました。ほら、お姉ちゃんも」
「ありがとう!後藤君!!」
「それじゃあ、中に入るか、俺もそろそろバイトの時間だから」
「は~い!あ、それじゃあ私もお店に寄って行って良い?今帰っても暇だからさ~、お願い!」
「だったら私たちの部屋でお話しない?私、もっと夢奈ちゃんとお話がしたいわ!」
「え!良いんですか?」
「えぇ!しぃちゃんも良いわよね?」
「私は勉強したいんだけど……」
「「え……?」」
「え?なんでそんな表情するの……?」
予想してい居た返事と違ったことに戸惑いの表情と声を出しながら詩音の方を見た。2人の反応に困惑の表情を浮かべていると、2人はじりじりと詰め寄りながら話しかけた。
「ねぇ~、詩音ちゃん!お願い!私、2人の話が聞きたいの!」
「私も!夢奈ちゃんと一緒に”ガールズトーク”がしてみたいの!だから、しぃちゃんも一緒に話しましょう♪」
「いや、でも『詩音ちゃん……!』『しぃちゃん……!』ぐっ……!!」
2人による同時の近距離上目遣いにたじろぎ、そして大きな溜め息を着いてから諦めた表情で口を開いた。
「はぁ~……、分かった、分かった!一緒に居るから!それで良い?」
「そうこなくっちゃ!」
「しぃちゃ~ん!」
「あぁ~!分かったから!!抱き着かないで!お姉ちゃん!!ほら、早く店の中に入るよ!」
抱き着いている愛歌を引き剥がしながら、3人は先に店の中に入って行った。その後に続くように俺も店の中に入った。
「いらっしゃい。と、お帰り。愛歌、詩音」
「ただいま、叔父さん」
「帰ったよ、叔父さん」
「おぅ、夢歩も2人の案内ありがとな」
「大丈夫ですよ。俺、このままバイトに入りますね」
「叔父さん、私たちは家の方に戻っていますね」
「はいよ~」
店長の返事を聞いてから愛歌たち3人は住まいの方に向かって行った。俺もバイトの準備をする為ロッカールームに向かった。荷物を置いてエプロンを着てから、カウンターに向かうと丁度コーヒーを淹れたカップをお盆に置いていた店長が気が付いた。
「お、来たな。そんじゃあこのコーヒーを3番テーブルのお客さんの所に持って行ってくれ」
「分かりました」
お盆を持ってテーブルへ向かいコーヒーをお客さんの元へ届けた。そうやって仕事をこなし続け客の人数が疎らになってきた頃、店長が2人分のコーヒーを用意して俺に話しかけてきた。
「ほら、休憩がてら一杯どうだ?」
「ありがとうございます。頂きます」
店長から貰ったコーヒーを一口飲んでから、俺はあの2人について聞いてみることにした。
「そう言えば店長。あの2人は店長の知り合いなんですか?確か姪って」言っていましたが?」
「んぁ?あぁ、あの2人は俺の姉の子供でな。最近まで姉と一緒に住んでいたんだが、今年からこっちで住むことにしたらしい」
「そうなんですね」
「あぁ。それとな、1つだけ言っておくことがあるんだ」
「?何でしょう?」
俺が店長に聞き返すと、店長は何処か真剣な眼差しをこちらに向けて話しかけてきた。
「こう言うのは余り性に合わないけれどよ……、愛歌と仲良くしてやってくれ。あいつ、どうやらこっちに来る前に”色々”在ったようだからよ」
「店長……、分かりました。俺のできる限り仲良くしてみますよ」
「……あぁ。頼むぞ」
俺の返事を聞いた店長は安心した表情で呟いてからコーヒーを飲んだ。それを見つめながら俺も残りのコーヒーを飲み終わすと、丁度新たな来客者が店内に入ってきた。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ!ほら、お客様のところに行ってこい」
「分かりました」
いつの間にか残りのコーヒーを飲み終わらせていた店長に促され、俺はメニューを持ってお客様の元に向かった。
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