第4話

「シュークリーム食べ終わったら、今度こそ話しを聞かせてね。二人で決めたじゃん。君が振られたら僕が慰めるって。僕がもし振られた時は話しを聞いてもらうんだから、遠慮なんてしないでよ」

 

 君は僕の言葉に反応することなく、シュークリームを食べ続けていた。

 そして食べ終わったシュークリームの空袋を無言で僕に差し出した。

 

「ゴミ捨ててくるから話しができるように心の準備をしておいてよ」

 

 そう言い残して僕はゴミを捨てるため、君の座っているベンチから離れた。

 この公園のゴミ箱は少し遠く、入り口付近にあるトイレの隣にある。僕がゴミを捨ててベンチに戻るまで二分くらいはあるはずだ。その間に心を決めてくれたらいい。それでいい。

 僕は君の座っているベンチに無言で座った。それを待っていたかのように君は話し出した。

 

「今回は、上手くいくと思っていたんだ。デートも何回もしたし、出会ってまだ二ヶ月半だよ。告白の三ヶ月ルールも守ったのに、私ってなんで何回も振られるの? 健、私ってどこがダメなの? ダメなところ教えて、今すぐ直すから!」

 

 気付けば君は僕の至近距離まで近づき迫っていた。近さ故に君の体を優しく抱きしめたかったが、公衆の面前だと言うこともあり両肩を掴むことで自制した。

 

「さっきみたいにわがままなところ……」

 

 口ではそう言ったが本心では、君に悪いところなんてない、僕なら君を誰よりも知っているし、君を悲しませることなんてしない。と言いたかった。

 

「あ、あれは、健にだけしかしてないから! つ、付き合う前からわがまま言いすぎたら幻滅されるでしょ? だから私だって、言いたいこと我慢して大人しく過ごしてるの! もう、健って何でそんなデリカシーのないことしか言えないの?」

 

「健にしかしてない」僕はその言葉が何よりも嬉しかった。君の本当の顔を知っているのは僕だけなんだ。君が僕を選べば全てが上手くいくと思うのに君はどうしてそれに気付かないかな。

 

「わがままっ子のオーラが滲み出てるんじゃないの?」

 

「それは絶対にない。ちゃんと仮面かぶっているから!」

 

 それはそれでどうなのか?

 それから僕らは、空がオレンジ色に染まるまで、愚痴を聞いたり嫌味を言ったり和気藹々と会話を弾ませた。

 そろそろ解散しようと君が言い出して、もう少し君との時間を過ごしたかった僕は、君をディナーに誘ってみたが、あえなく撃沈した。そんな帰り道。スマホに君からメッセージは入っていた。

 

(今日はありがとう)

(おかげでスッキリした!)

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