第2話

 感情に身を任せ辛辣な言葉を掛けるのは、君を余計に傷つけるに違いない。これだけ君を想っている僕なら、君を泣かすようなことはしないのに……。

 そんなことを思っていても、一切口にはできない僕だった。誰よりも君のことを思っていても、僕らの関係は所詮ただの幼馴染。それ以上でも以下でもない。君と僕が付き合う未来を妄想しては、君の失恋話を聞かされる度に現実を突きつけられる。それでも、君を「好き」だと言えなくても、僕できる最大限で君のサポートは行う。

 

「石川先輩も石川先輩だよ。遊びに誘ったら必ず来るのに、告白したら振るなんてあんまりだよ!」

 

 やけ食いをしながら君はそう話した。

 

「青葉のことは所詮ただの遊び相手にしか思っていないんじゃないの?」

 

「そんなことは……ないと信じたいけど、そうなのかも……」

 

 食べている手を止め、うつむき加減に君は話した。

 

「そんな奴のことなんて忘れてさ……」

 

 途中で止めることはできたけど、僕は何てことを言おうとしているんだ。君の弱みに付け込むような真似を、僕がしてどうする。

 

「途中で止めて、どうしたの?」

 

「やっぱり何でもない……」

 

「えー、気になるじゃん! 教えてよー!」

 

「青葉には秘密。変に揶揄われたくないから」

 

「絶対に揶揄ったりしないから続きを教えて。絶対に揶揄ったりしないから!」

 

 そんなニヤけた顔で言われら説得力がない。口ではそう言っておきながら絶対に後から揶揄うやつの話し方だ。

 

「今日は青葉の話を聞く日だから、僕の話しはなし」

 

「何それ。なんかちょっとずるい。そう言えば、たけるの好きな人未だに教えてくれないじゃん。健だけ秘密が多いのはずるいよ! 卑怯だよ!」

 

 君にずるいや卑怯と言われるのは心が痛むけれど、今は僕の想いを君に伝えるわけにはいかない。

 

「ずるくないよ。いつも青葉が勝手に自分のことをベラベラと喋りすぎなだけだよ」

 

 流石に僕も言いすぎたと思い君に視線を向けると、君はフグのように頬を膨らませ僕を睨みつけていた。

 

「嘘だって。冗談だって。そんなに怒らないでよ」

 

 謝罪の言葉を君は受け入れることはなく、逆にそっぽを向いてしまった。なかなか機嫌の治らない君に僕はカフェで買ったパンケーキを君に差し出した。君は不機嫌な顔のままそれを受け取り何も言わずに食べ始めた。

 

「おいしい……」

 

 我慢していたのか、咄嗟にそ言ってしまい君は左手で自分の口を覆った。

 

「青葉の口に合ってよかった。よかったら、僕の分も食べてよ。さっきのお詫び」

 

 君は嬉しそうに目を光らせていたが、何かに気付いたのかパンケーキ僕に返した。

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