第6話

 そんな眠っている君を僕はベッドに寝かして、羽織っている上着を一枚脱がした。布団をかけて眠っている君の顔を、ベッドのすぐ横に座って間近に見つめた。今君は眠っているから、勇気のない僕にでも君に言いたいことを言えた。眠っている君に僕は、問いかけるように呟いた。

 

「青葉、僕は君と久しぶりに話せたあの時から君が好きだったのかもしれない。君が僕を見つめる視線は友達に向けるものそのものだけど、僕は君を恋愛の対象とししか見ていないよ。いつか君に面と向かって言えたらいいな。好きだって……」

 

 僕が言葉を止めると、君は目を覚まして上半身だけを起こした。焦った僕は咄嗟にベッドにもたれかかるように眠ったふりをしたら、君は僕の唇にキスをして意識でも失ったように眠りについた。君が完全に眠っているか確かめるために、君の頬を人差し指で二回つついてみるが反応は何もなかった。僕の心臓はまだまだ大きな音で鳴り響いている。取り敢えずお風呂に入り、心臓の音を落ち着かせた。いつもなら二十分くらいでお風呂を上がっているが、今日はいつもに増して長く湯船に浸かった。

 お風呂から出たら君がもしかしたら起きているかもしれないから、湯船のお湯は抜かずそのままにしてお風呂場を後にした。僕の予想とは裏腹に君はぐっすりと眠ったままだった。相変わらず寝相は悪いみたいで、掛けていた布団を蹴っていた。僕は君にもう一度布団をかけて、僕自身は埃の被った客人用の布団をクローゼットの奥から取り出し、できるだけ君と距離を取れるようにキッチンの床に布団を敷いた。寝心地は少し悪いけど、眠られないほどではない。今のところ底冷えも感じない。

 酔いもあった僕は割とすぐに眠りについた。朝は君に揺さぶられ起こされた。

 

「ねえ、健! 私たち何にもなかったよね?」

 

 僕は君にそんな言葉で起こされたくはなかった。

 

「大丈夫だよ。僕も酔っていたから帰ってすぐに寝たから」

 

「よかった〜」

 

 君は安心した顔を浮かべていた。本当は昨日、君に唇にキスをされた。がそれは君には秘密だ。

 

「健とだったら何かあってもまだ許せたけど、何もなかったのならよかった」

 

 曖昧な言葉が一番人を傷つけると言うことを君はまだ知らない。そんなことを言われてしまえば、僕の心臓は高鳴るばかりで、いつ君に襲いかかってもおかしくない精神状態だった。そんな心を紛らわすために、僕は君にある提案をした。

 

「青葉。昨日眠ってしまってたからとりあえずお風呂に入ったら?」

 

「うん、そうする」

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