絶望に沈んだ男をすくい上げたのは、うつくしい「あお」

 船の事故で全てを失いながらも、一命を取り留め、とある漁村に暮らすようになったアデル。彼を救ったのは、幼くも美しい人魚の少女メアでした。

 嵐の海に投げ出された男と、彼を救った人魚の少女。二人の関係はおとぎ話とは少し違うけれど、アデルのことが気になって仕方がないメアは彼らの扱う網にかかってしまうようなうっかりだけれど、健気な女の子。

 ある日、メアはとある「探し物」が見つかったことを彼に告げるのですが——。

 人魚姫といえば悲恋の物語ですが、この少女の恋心はどこへ向かうのか。

 掌編ながらも描写がとても細やかで目に浮かぶよう。何より登場人物たちの心情が真っ直ぐに伝わってくる、「物語」がぎゅぎゅっと詰まっていて、余韻がとても美しいお話でした。