ずっと眺めてた〈推し〉が話しかけてきたら、どうする?

 本作は、ミステリアスな魅力をもつ花耶と彼女を推す彩都が出会い、毎週木曜日の夜だけ会う関係になる、というお話です。

 花耶のキャラクターに雰囲気があって好きでした。痩せすぎの体型、白い肌にハスキーな声、スマートな距離の詰め方、利便性よりもこだわりを貫く家具のチョイス。

 語り手が彩都である以上、彩都視点での花耶の見え方に乗っ取り、話は進んでいきます。それゆえに、後半になって学部の友人からは「三越花耶」と距離感を持ってフルネームで呼ばれる花耶の、彩都の視点の「外側」から見える一面があっけなく明らかになった時、彩都が受けた静かで大きな動揺の感情が、じんわり読者にも効いてくるように思いました。

 また、冒頭の炊き込みご飯の匂いがふっつらと漂う、湯気に包まれた描写がみずみずしいように、ところどころの表現がさりげなく美しいのもすてきでした。

(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=カクヨム運営スタッフA)

その他のおすすめレビュー

カクヨム運営公式さんの他のおすすめレビュー1,287