大学生の彩都(サト)は週に一度、木曜日、花耶(カヤ)の部屋に行き、料理を作り、二人で食べ、そして、セックスをする。
この作品の魅力は、彩都の感情の変化にある。
彼女は、花耶に対する感情を「推し」と定義し、恋愛とは切り離していたはずだ、それがいつしか彼女にも言い表せない物へと変化していく「花耶を自分のモノにしたい、花耶に自分だけを見て欲しい。」
最初は不可侵のものだった「推し」との関係の中で、彩都はそれに溺れ、自分のことすら分からなくなっていく。
自分の知らない花耶の一面を知った時、彩都の感じた想いは、その先の彼女の選択は!
ドロドロで、尚且つ美しい、二人の女の作品です。
1月16日 安藤栞
本作は、ミステリアスな魅力をもつ花耶と彼女を推す彩都が出会い、毎週木曜日の夜だけ会う関係になる、というお話です。
花耶のキャラクターに雰囲気があって好きでした。痩せすぎの体型、白い肌にハスキーな声、スマートな距離の詰め方、利便性よりもこだわりを貫く家具のチョイス。
語り手が彩都である以上、彩都視点での花耶の見え方に乗っ取り、話は進んでいきます。それゆえに、後半になって学部の友人からは「三越花耶」と距離感を持ってフルネームで呼ばれる花耶の、彩都の視点の「外側」から見える一面があっけなく明らかになった時、彩都が受けた静かで大きな動揺の感情が、じんわり読者にも効いてくるように思いました。
また、冒頭の炊き込みご飯の匂いがふっつらと漂う、湯気に包まれた描写がみずみずしいように、ところどころの表現がさりげなく美しいのもすてきでした。
(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=カクヨム運営スタッフA)