あとがき

 今回はQueue - Q.をお読みくださり、ありがとうございました。謎に始まり、謎に終わった本作には色々なメッセージが隠されており、その全てに作者である僕なりの意味を持たせましたが、自由な解釈を歓迎します。ただひとつだけ、本作を読み解くうえで重要なテーマを提示するとしたら、それは「情報の信憑性」と言ったところでしょうか。小難しいように聞こえるかもしれませんが、伝えたかったメッセージは単純明快で、日常生活において他人から聞いた話は妄信しない方が身のためだということ。


 皆さんは伝言ゲーム、やったことありますか。あれって意外と難しいんですよ。情報というのは薄い壁を一枚隔てるだけで容易に変形してしまう壊れ物ですし、壊れて散らばった破片が人を傷つけることも往々にしてあります。結局のところ、百聞は一見に如かずというように、真実は自分の目で見て確かめないといけないんですよね。


 少しでも分かりやすくするため、具体例を挙げましょうか。簡単な話、例えばスポーツ選手のインタビュー。最近だと米・MLBで大活躍中の大谷翔平選手や、今シーズンも漸く開幕戦を迎えた英・EPLでプレーする三苫薫選手などが有名ですが、彼らは主にメディアのインタビュー対応においては母国語である日本語を使用していますよね(英語で応対することもありますが)。その際には、彼らの発言を全世界の人々が知ることができるように、様々な言語に翻訳されてメディアが伝えるということになりましょう。しかし、その手の報道には誤訳がつきもので、間違った情報が大勢の手に渡ることで、本当は好意的な発言をした選手であっても、それが否定的に捉えられた結果、謂れのない批判にさらされるといった現象が多くあります。


 情報の編集方法によるメディア・バイアスもまたその一例です。報道各社により、情報の伝え方というものは様々ある訳ですが、それによって情報の受け手にも大きな影響がありますよね。代表的なのは、所謂アンケート調査。「○○について、全体の9割が○○と答えています」と報道されれば、受け手側の反応は極端なものになるでしょう。しかし、メディア側にも伝えたいメッセージというものがあり、それを効率的に伝えるためには報道内容にバイアスを掛けます。


 この場合、もし仮にアンケート調査を行った人の数が少なかったらとか、男性あるいは女性、特定の年齢層に限定して行われた調査だったらとか、批判的な目線から情報を見ないといけませんよね。メディアはそれぞれが伝えたいメッセージを効果的に受け手へと届けるため、これらの必要な情報を敢えて大々的に伝えないこともしばしばあります。ある情報について、穿った見方をするためには、一面的な情報に終始せず、沢山の情報を取り入れて、それら全てを総合的に勘案し、自分でその真偽を判断することが肝要です。


 この度は、そんな「情報に対する向き合い方」を比喩的に表現した作品を描いてみました。もともとはホラーテイストに仕上げる予定で、続きの構想も多少なりあるので反響が大きければ続編を書くかもしれません。その際には、今回伝えたかったメッセージとは一切関係なく、ただのホラーを書きたいと思います。


 それでは……!

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Queue yokamite @Phantasmagoria01

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