第7話
その後、アデリナとルチアは荒れ果てた旧王国領に赴いてポーションを配った。
ちなみに開戦直前に公爵家の親族は帝国に呼び寄せている。全員無事に帝都で暮らしている。
二人は旅の道中で、傷付いた民に施しを授けて回る修道女の一団と遭遇した。
「まあ、あなたはソニア!?」
「アデリナ様! お懐かしゅうございます!」
ソニアはあれから宣言通り修道院に入ると、才能を発揮。
回復の術をマスターして、今では聖女として扱われていた。
「お久しぶりですね、アデリナ様。そちらはルチアさんですか?」
「ええ、そうよ」
「お二人とも、とてもご立派になられて……。それにしても、まさかここで再会できるなんて思ってもみませんでした」
「私もよ。あなたは今、修道女として活動なさっているのね。あなただって立派だわ」
「私、あの時のことをずっと謝りたかったのです。私があの時、毅然と対応していればアデリナ様は……」
「もう過ぎたことだわ。気にしないで」
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
ソニアは何度も頭を下げながら涙を流した。
「聖女様ー、何をなさっているのですかー?」
「あ、ごめんなさい! 今行くわ!」
「ソニア、あなたも今は良い仲間に囲まれているようね」
「はい。こんな私を聖女と呼んでくださる、素敵な仲間です」
ソニアは嬉しそうに、誇らしそうに微笑んだ。
いい笑顔だ。王立学院にいた頃には見たことのない笑顔に、アデリナもほっとする。
「これで良かったのよ。私達はこれからもお互い頑張りましょう」
「はい!」
アデリナとソニアは固い握手を交わした。
そしてアデリナとルチアは旅を再開する。
「あんなふうに別れてしまって良かったの?」
「いいのよ、あの子にはあの子の、私には私の人生があるわ」
アデリナはルチアの手を握る。
「私が人生を共にしたいと思う相手はルチア、あなただけよ。あなたがいたから私はポーション作りの才能を究めることができた。自分一人では王国の外へ飛び出す勇気も、帝国に定住する勇気も持てなかった。全部あなたが一緒にいてくれたから、決断できたのよ」
「アデリナ」
「私と出会ってくれてありがとう。私の恋を許してくれてありがとう。私と一緒に生きてくれてありがとう。大好きよ、ルチア」
「……あたしだって、君のおかげでどれだけ救われたんだか。あたしたち魔女は人間とは違う。長い寿命を持っている。ずっと孤独だったの。それなのに君はあたしを恐れず、一緒にいたいと言ってくれた。そんな君にどれほど救われたか分からないわ」
「ルチア……ねえ、これからもあなたの孤独を、私に埋めさせてほしいの。私と結婚して、家族になって、ずっと一緒に生きていきましょう」
「……何度も求婚してくるけど、どういう意味か分かっているの? 魔女と結婚するということは、人間であることを捨てて、魔女と同じ不老長寿になるということよ。一つの場所、一つの国に定住することが難しくなる。せっかく帝国で地位を得たのに、捨て去ることになるのよ」
「構わないわ。帝国は気に入っているけど、それ以上にあなたの方が大切だもの」
「……後悔するかもしれないのに」
「するわけがないじゃない」
「…………分かったわ」
ルチアはアデリナに抱き着いてキスをした。
二人は口づけを交わす。
アデリナは幸せに包まれる。
ずっと大好きだった年上の幼馴染が、ようやく気持ちに応えてくれた。
「愛しているわ、ルチア」
「あたしもアデリナを愛している」
二人はいつまでも抱きしめ合い、笑い合った。
こうしてアデリナとルチアは結婚した。
結婚と同時にアデリナは長命種となり、ルチアと同じ不老長寿の力を手に入れた。
「おめでとう、二人とも。お前たちの結婚を見届けられたこと、余は誇らしく思うぞ」
「ありがとうございます、フレデリカ陛下」
帝国の女帝フレデリカも、二人の結婚を祝福してくれた。
「お前たちは長命種ゆえに一つの場所に留まらないそうだが、せめて余が在位の間は帝国に留まってくれないか。この国にはまだお前たちの力が必要だ」
「分かりました、陛下。喜んで協力致します」
「うむ、頼む。それでこそ余が見込んだ臣下だ」
フレデリカは満足げに微笑んだ。
こうしてアデリナは、ポーション作りの才能を発揮して認められ、年の差幼馴染のルチアと幸せな未来を掴んだ。
これから先も二人の人生が続く限り、幸せな物語は紡がれ続けていくだろう。
永遠に――。
婚約破棄された悪役令嬢がスキル【ポーション作り】で王子をざまぁ、年の差幼馴染と百合ハッピーエンドを迎えるガールズラブ 沙寺絃@『追放された薬師~』12/22発 @satellite007
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