婚約破棄された悪役令嬢がスキル【ポーション作り】で王子をざまぁ、年の差幼馴染と百合ハッピーエンドを迎えるガールズラブ

沙寺絃@『追放された薬師~』12/22発

第1話

アデリナ・アインバッハ公爵令嬢。


王国の王太子マルティンの婚約者である。


そんな彼女は十八歳。王立学院の卒業パーティー当日の舞踏会で、マルティンから婚約破棄を宣告された。




「アデリナ、悪いが君との婚約を解消させてもらいたい」




アデリナとマルティンの婚約は、王家と公爵家の取り決めである。


しかし、マルティンはいきなり解消したいと言い出した。




「僕は真実の愛を見つけてしまったんだ。ソニア・シューマン。僕は彼女と結婚したい。ソニアはお前と違って優しくて愛らしい、女性の鑑のような人だからな」


「はあ」


「アデリナのような気位ばかりが高くて扱いにくい女性はもう沢山だ。頼むから婚約を解消してくれ、そして僕の前から消えてくれ。顔も見たくないから、二度とその姿を見せるんじゃないぞ!」




マルティンはそう言い放った。


アデリナとマルティンの間に恋愛感情と呼べるものはない。


しかし、その言い方にはカチンときてしまった。




「そんなに婚約を解消したいのであれば、謹んでお受けいたします」




アデリナは恭しく頭を下げる。


マルティンは戸惑っているソニアの手を取ると、会場から出て行ってしまった。


会場に残された人々は、アデリナに同情の視線を向ける。




「アデリナ様……」


「いくらなんでも酷いですわ! お可哀相に」


「皆様、お気遣いありがとうございます。私は平気ですわ。それでは失礼します」




アデリナは会場を立ち去る。




(まったく、なんという恥知らずな男でしょう)




それからアデリナは王都の屋敷に帰り、家族と話し合う。


話し合いが終わると、その足で馬車に乗り込み、王都の外れにある魔法道具店に向かった。


店の奥には長い黒髪に黒い瞳の女性がいる。


整った顔立ちでスレンダーな体型。年齢は二十歳前半ぐらいにしか見えない。


この店の店主、ルチアである。




「あら? アデリナじゃない。どうしたの? こんな時間に何の用?」


「婚約破棄されてしまったわ」


「は?」


「婚約破棄されてしまったの」


「いや、聞こえなかったわけじゃないから。そんな笑顔で報告されたから戸惑っただけよ」


「だって嬉しいんだもの。私、王太子に婚約破棄されたのよ、王太子よ。これでもう私と結婚したがる男なんて現れないわ!」




アデリナはとても上機嫌だった。


今までの人生で一番いい気分かもしれない。


アデリナは呆れるルチアに抱き着いた。


ルチアはアデリナよりも遥かに年上の幼馴染だ。


見た目は若々しく二十代の女性にしか見えないが、本人曰く百歳超えの魔女。


店で売っている魔法道具も、ほとんどが魔法で作ったものである。


本人はやる気がないので、全然流行っていないが。




ちなみに一番の売れ筋は、アデリナが作ったポーションである。


アデリナにはポーション作りの才能があった。


というか、それぐらいしか才能がない。


しかしアデリナはポーション作りのスキルを究め、今では右に並ぶ者もいないほどの腕前だ。




「アデリナ、昔から結婚したくないって言ってたもんねぇ」




ルチアはよしよしとアデリナの頭を撫でる。


大好きな幼馴染に撫でられながら、アデリナは昔のことを思い出していた。

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