第6話

「何故だ!! 何故我が王国が衰退して、オースティン帝国が繁栄するのだ!!」




王国の玉座で、国王に即位したマルティンが吠える。


しかし誰もがマルティンに冷たい視線を注いでいた。




「陛下がアデリナ様を婚約破棄なさったからでしょう」


「あなたが婚約破棄したせいでアデリナ様はオースティン帝国へ行ってしまわれたのですよ」


「アデリナ様がいれば、王国はもっと栄えていたはずなのに」




アデリナの名声は王国にまで轟いていた。


帝国の繁栄と王国の衰退。


その国力の差を見せつけられるにつれ、マルティンはどんどん求心力を失っていった。




「うるさい、僕は悪くない! こうなったら戦争だ! 帝国に宣戦布告するんだ! 帝国に拉致されたアデリナを取り戻すんだ!」


「おやめください、陛下! そんなことをすれば、王国は滅亡してしまいます!!」


「うるさい! 歯向かう者は首を撥ねるぞ! この国では僕が王だ! 僕が秩序だ! 逆らう奴は全員死刑にしてくれる!」


「ひぃっ!?」




マルティンはついに怒りの矛先を臣下に向けた。


臣下たちは恐れ戦き、マルティンはますます増長していく。


自分を支持する貴族達と結託し、自らの婚約破棄は棚にあげ、アデリナを拉致したと因縁をつけて帝国に宣戦布告をした。




もちろん圧倒的な国力の差と、兵士の健康状態、士気の差は歴然で王国はあっという間に蹂躙された。


そして国としての体を失い、帝国領の一部に組み込まれた。


王国民は暗君からの解放を喜び、進んで帝国の民となった。




マルティンはその後、戦争責任者として処刑されることになる。


しかも帝国の手ではなく、散々苦しめた王国民によって処刑台に立たされ、ギロチン刑に処されたのである。


今まで虐げられてきた王国民たちは、マルティン国王の処刑を大いに喜んだ。


権力者の処刑を歓迎して受け入れる。これもまた人間の業である。

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