水巡る世界で紡がれる歴史の上流

『砂竜使いナージファの養女』から約125年前を舞台にした外伝的作品。
変わり者と呼ばれる皇女ラフィアが降嫁したのは、砂竜族である白の氏族長の長男アースィム。
常に平静を崩さないアースィムに自身が愛されているか分からず、白の氏族たちにも受け入れられているか不安なラフィアに降りかかる苦難……。

人気シリーズ『砂竜使いナージファの養女』と同じ世界観の過去を描く作品。
乾いた砂漠のなかで瑞々しい人間の心情が輝く世界観と、それを紡ぐ文章は円熟の境地に入っています。
砂漠に暮らす人々の生活のリアリティ、小さなコミュニティでの心の機微など、五感を通して語りかけてくる世界は圧巻。

でも難しいことは考えず、イケメンだけど何を考えているか分からないアースィムと、不思議な力を持つが故に孤独に身を置くラフィアとの、ハラハラ、ドキドキの物語を楽しめばいいと思います。
心のままに楽しめる舞台は整っています。
あとは、ラフィアとアースィムの愛情が本物か見届けるだけ!

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